ORCALANDが下北沢のヒーローになった日 主催イベント『ナワバリロックフェスティバル 2024』【オフィシャルレポート】
11月10日、ORCALANDが主催する『ナワバリロックフェスティバル 2024』が、東京・下北沢ADRIFT & 空き地にて開催された。 【全ての写真】ORCALAND主催イベント『ナワバリロックフェスティバル 2024』(全18枚) 「誰ひとり置いていかないロックバンド」を標榜し、ポジティブな音と言葉を発信する4人組・ORCALAND。結成の地でもある東京・下北沢への愛着は深く、2023年には12カ月連続の自主企画イベント『ジントリ』をいずれも下北沢のライブハウスにて開催したことでも話題を集めた。 そんな『ジントリ』を発展させる形で開催された今回のフェスでは、小田急線東北沢駅~世田谷代田駅の地下化に伴い2020年から開発が進んでいる新しい街・下北線路街にふたつのステージを用意。バンドアクトを中心に据えた下北沢ADRIFTの『鯱城STAGE』と、野外でのアコースティックライブを展開する下北沢空き地の『鯱町STAGE』に、ORCALANDと縁のあるアーティストたちが被りなしのタイムテーブルのもと集結した。 ライブ以外にも、大塚祥輝(vo&g)が装飾した『ナワバリメモリアルスペース』の展開や、こーてぃん(ds)とAYANE COFFEE & CRAFTがコラボしたコーヒーショップ『今日コーヒー飲みすぎてこーひぃんになるわ。』、村田京哉(g)が招いた『KASSU CURRY』の出店、おとやん(b)による『おとやんのボロリメイクオルカTシャツ』の販売など、メンバーの個性が発揮された催しが盛りだくさん。バンドが放つピースフルなバイブスを、五感でたっぷり味わえる一日となった。 イベントの幕開けとなったのは、この日の主役であるORCALANDによる初のアコースティック形態でのライブだ。あいにくの小雨が芝生を濡らす鯱町STAGEに登場した大塚は、「雲ひとつない青空ですね。天気にも恵まれて、うれしい限りです!」とうそぶき笑いを誘う。しかし、一曲目「ラブソングになんかしてやんないわ」を歌い出すや否や実際に雨足が弱まってしまうのだから、大塚は"持っている"バンドマンなのかもしれない。「『アコースティックだからこんな曲をやるだろう』っていうのを裏切りたくて」と届けられた「ダンシングゾンビの決意」ではハンドクラップが起こり、特別な今日という日がとうとう始まったという実感が胸に広がっていく。大塚のソフトな歌声はもちろん、こーてぃんによるコーラスが心地良く滑らかに響くのも、この編成ならではだ。最後に代表曲「テレキャスター・ヒーロー」をベースソロをフィーチャーしたスペシャルバージョンで披露し、最高のスタートを切ってくれた。 鯱城STAGEに足を踏み入れると、フロアには紅白の提灯が装飾され、お祭りムードが醸し出されている。トップバッターを務めたのは、ORCALANDのメンバーも学生時代にコピーしていたというMOSHIMO。「釣った魚にエサやれ」の一瀬貴之(g)によるメタリックなリフでいきなりオーディエンスを引き込みながら、岩淵紗貴(vo&g)は曲中で「昨日深夜までレコーディングしてたから、むくみとクマがひどくて……」と飾らない姿を覗かせる。岩淵のボーカルギターとピンボーカルのスタイルを自在に切り替える縦横無尽のステージング、そして代表曲「命短し恋せよ乙女」での「命短し恋せよナワバリロック!」のコール&レスポンスが、見事に会場を掌握していた。 二番手としてADRIFTのステージに立ったのはanewhite。メロディアスに絡み合うツインギターと情景を膨らませる同期音を組み込んだ緻密なアンサンブルが魅力の4人組バンドだ。ブレない芯を感じさせながら強さも淡さも描く佐藤佑樹(g&vo)の歌唱表現力が、リスナーの想像力を借りながら、会場の空間を無限に拡張させていく。 続く#KTちゃんは、この日唯一のHIPHOPアクト。しかし、猛者が集うMCバトル現場をサバイブしてきた彼女には、アウェイの環境もなんのその。「はじめましての人がほとんどだと思うけど、今この瞬間はここが私のナワバリ。みんなで楽しんでいきましょう!」とアジテーションする。予定されていたセットリストを終えた後も持ち時間が余っていたということで、「BaNe BaNe」をフロアに降りてもう一度披露。オーディエンス全員とハイタッチを交わし(「ハイタッチしてない人は挙手!」と確認していたので、本当に全員と、である)、ハートを鷲掴みにした。