天然の魚が将来は貴重品に?「食のサスティナビリティ」は救世主となるか
持続可能性を意味する「サステナビリティ」という言葉が、日本でも少しずつ浸透し始めている。もともとは森林伐採などによる環境破壊に対する警鐘と対策として、持続可能な社会づくりを求める声が出てきたのが始まりだが、やがてこの言葉と考え方は、林業だけではなく漁業にまで広がりを見せた。毎日のように食卓に並ぶ、魚などの水産品だが、乱獲などによって魚の数が激減している現状は大きな問題だ。サステナビリティは水産資源の救世主となり得るのだろうか? 関係者への取材で見えてきたことを2回にわたってお届けする。
森林だけではなく「五輪」や「水産物」にも
環境保護から五輪開催後の街づくりまで、近年、様々な場所で「サステナビリティ」という言葉が使われ始めている。サステナビリティとは本来、英語で持続可能性を意味するが、社会・経済・環境の3点が上手く調和しながら、持続可能な社会作りを模索していく考え方という意味で広く使われ始めている。日本国内でもCSR(企業の社会的責任)の一環として、主に環境面に配慮した持続可能な社会づくりを目指す企業が増え始めている。二酸化炭素の排出をできるだけ減らす社会づくり、魚の乱獲や過度な森林伐採を減らし自然と共生していくための社会づくり、そしてリサイクルやリユースといった資源の再活用を目指す社会づくりの重要性が認識され始めてきた。 2012年に開催されたロンドン五輪ではサステナビリティも重視され、気候変動、廃棄物、生物の多様性、多様性の受け入れ、健康的な暮らしを五輪終了後も社会が持続して行っていくことを目標に、国際的なイベントにサステナビリティという考えを本格的に取り込んだ大会であった。ロンドン五輪ではコンパクトな大会運営や、大会終了後の関連施設の再利用、パラリンピックの成功における多様性の浸透といった点で、近年開催された五輪では非常に大きな成功を収めた大会として認識されている。オリンピック公園の解体工事で生まれた廃材の約98パーセントが再利用され、五輪開催の前後に開催地周辺の再開発を行うなど、現在では五輪にもサステナビリティの重要性が問われる時代だ。 様々な形の「サステナビリティ」が存在し、それらが社会にとってなぜ必要だという認識も徐々に浸透しつつあるが、今回は水産物のサステナビリティについて考えてみたいと思う。魚をはじめとする水産物は、日本の国内外で古くから食材として使われており、日本では縄文時代にはすでに魚や貝が食べられていた。古代ギリシャでは魚は日常の食材で、肉よりもはるかに頻繁に食べられていたという説もあるほどだ。現在も世界中で毎日消費されている水産品だが、漁業の形態の変化とともに乱獲も問題となり、水産資源の持続可能性という点で大きな問題に直面している。