MYTH & ROID春ツアー"VERDE"初日レポート「この顔を見るためなら、何だってしたい」
連作のコンセプトミニアルバムの後編となる『VERDE』をリリースしたMYTH& ROID(ミスアンドロイド)。この作品を核に据えた春ツアーを開催している。モチーフの“彫刻をめぐる物語”に込めた想いも明かされた、初日の静岡公演をリポートする。 【全ての画像】『MYTH & ROID One Man Live 2024 Spring Tour "VERDE"』4月13日(土) LIVE ROXY SHIZUOKA公演(全16枚) 開演前のステージに光るグリーンのライト。木々のざわめきや鳥のさえずりが入るSE。スペイン語で“緑”を意味する『VERDE』をタイトルに、森が舞台のミニアルバムをフィーチャーするツアーの幕開けが、LIVE ROXY SHIZUOKAに迫っていた。 バンドメンバーが入ると観客が一斉に立ち上がる。グリーンの照明がビームになってフロアに飛び交う中、ハットを被ったギターのTom-H@ckが現れて拍手が起こった。続いてボーカルのKIHOWが入ってくると、照明は赤く変わり、そのままスッと荘厳に歌い始めた。 Tom-H@ckが腰を落として奏でるギターなど、バックのサウンドが激しくなっても、KIHOWはスタンドマイクの前で直立不動で静かに、しかし力強い歌を聞かせる。退廃的な世界観と同化したたたずまいは、神秘的ですらあった。 「VERDEへようこそ」とひと言告げて、センターに歩み出したKIHOWは一転、「L.L.L.」をアタマから激しく歌い出す。感情むき出しでハイウェイをブッ飛ばすようなスピード感に、観客も「オイ! オイ!」と拳を上げて乗っていく。 Tom-H@ckと交差して立ち位置を入れ替えながら、今度は激しくもクールな歌でゾクゾクさせる。「まだ出せるんじゃない?」とフロアを煽り、最後は「Kill it,kill it」からノーブレスのシャウトを英語でたたみ込み、右手を高く掲げてキメた。 いつものことながら、KIHOWはギアを自在に入れ替えるように、レンジの広い歌声を駆使していく。その豊かな表現力を冒頭から発揮し、オーディエンスの胸を波打たせていた。 コンセプトミニアルバムの前編『AZUL』からは、MYTH & ROIDの新機軸を打ち出した「RAISON D’ETRE」で心地良いグルーブが奏でられる。アイランドリゾートのクラブを思わす開放感に、心が沸き立ち体も動いた。 続く「ACHE in PULSE」は英語のささやくような台詞から、強靭なボーカルへと流れる。デジタルサウンドで押しながら、Tom-H@ckがドライブ感のあるギタープレイでアゲていく。2段で繰り広げるサビでは「エオ、エオ、エオ、エオ」とフロアから両手を上げての合唱で沸いた。 「前回の『AZUL』ツアーで静岡を入れて、皆さんの盛り上がりと温かさに触れて。そのステージの上でライブ中に、また戻ってこようと決めました」 MCでKIHOWがそう話すと、観客から拍手が送られる。そして、「話したことがなかった」というグッズの話題に。 『VERDE』にちなみ緑 をあしらったタオル、グリーンのLEDが光るリストバンドなどのこだわりを語る。Tom-H@ckから「こんな序盤にグッズを紹介するアーティストは初めて」とツッコミが入りつつ、パフォーマンスとは一変のユルい話が続いた。 Tシャツフロント部分の絵は画家でもあるKIHOWが手掛けたもの。『AZUL』ツアーが終わった昨年11月から取り掛かりつつ、描き終えたのはつい最近とのことだった。 「途中で意味がわからなくなっちゃって。『VERDE』に対する想いを絵で表現しようと思ったんですけど、深いところまで行き過ぎました。でも、いろいろなことを考えた結果、思うままに描くことができました」 10日ほど前にプロモーションで静岡に来たとき、Tom-H@ckがうな重を二人前と半分をたいらげたという話も出て、KIHOWが「こんなゆるふわなコーナーはもうおしまい(笑)」と切り上げた。 「セトリはかなりストイックなことになってます。懐かしい楽曲を歌おうと思います」と告げて ステージを再開。青いスポットライトを浴びたKIHOWはゆったり歌いながらアクセントを付けて、じっくりと染み入らせていった。 さらにアニメ『メイドインアビス 烈日の黄金郷』のEDテーマだった「Endless Embrace」とバラードを続ける。哀感を携えながら、悠久を思わす広がりのあるボーカル。夢の中をさまよう感覚にさせるのは、ライブで“非日常”を掲げるMYTH & ROIDの真骨頂でもあった。