MYTH & ROID春ツアー"VERDE"初日レポート「この顔を見るためなら、何だってしたい」
ここで再びMC。Tom-H@ckが『VERDE』に込めた想いを語っていく。 「この15~20年、歴史の教科書に載るくらい、いろいろなことがあったと思うんです。僕たちも皆さんも、その20年を生き抜いてここにいます。僕は東北出身で、戻らない辛いこともたくさんあって。でも、人間、悲しみだけで人生を終えるために生まれてきてない。次のドアを開けなきゃいけないときが、誰にでもいつか来る。そのドアの開け方やドアが見えた希望を、MYTH & ROIDの世界観で描きたかったんです」 「『VERDE』は後編。現代に思うことを表現した作品です。簡単に言うと集団心理。SNSで理不尽なことが起きたり、間違ったことが大きな力で正しいと言われて信じてしまったり。声を上げた人が叩かれて、後々に実は正しかったとか、そういうことがある。だから、皆さんが良いと思ったものが、周りから良くないと言われても、大切にして欲しい……ということを詰めさせていただきました」 そんな話から、ツアーの軸の『VERDE』の世界へ物語の朗読と共に入っていく。 『AZUL』で海底に沈んだ街が、長い年月を経て浮上して再び活気を取り戻した。腐食した彫刻を神とする信仰。禁忌を破り、その像を描く少女の衝動を歌う「Palette of Passion」が、激しいギターのリフとヒリヒリするボーカルで奏でられる。何かを削り取るようなサウンドでグイグイ迫ってきた。 攻撃的なギターからのラウドロック「RESIST-IST」では、激しさがさらに極まる。 NHKの『J-MELO』に出演した際に披露した1曲。全編英語詞ながら、先のMCでTom-H@ckが「想いの30倍くらいの数々の強力な言葉で、テレビでは流してはいけないくらい(笑)」と話していた。ちなみにMYTH & ROIDのホームページには、他の曲も含め英語詞の和訳が掲載されている。そんな曲で、KIHOWのハイトーンで叫ぶ爆発力にシビれた。 街を追放された少女が、生きて出られないとされる森をさまよい、情熱を貫くことを決意。森が炎に包まれるが、目を開けると、そこに草原が広がっていて……。その森での彷徨の様子をKIHOWが軽やかに歌う。 『VERDE』のエンディングは、ピアノに乗った聖歌ふうの「Whiter-than-white」。「You’ll live on.Not alone.」と希望を歌い、伸びやかにビブラートも効かせた歌声が、すべてを浄化するように響きわたった。 物語を抜けて、KIHOWが語る。 「アーティストを続けていく中で、自分がこれ以上、違うものに変われるのか、考えていたタイミングがありました。目の前のことに取り組みながら、2年前の秋、初めての有観客ワンマンで見た皆さんの顔が、忘れられなかったんです。この顔を見るためなら、何だってしたいと思いました」 「今からでも変われると気づいて、視界が明るくなるような感覚があって。みんなをもっと大きなところに連れていきたい。今、そんな気持ちが一番強いです。これからも付いてきてください」 拍手を浴びて、「今日も皆さん、声を出したり手を上げたりジャンプしてくれてますけど、これから熱量がさらに上がります。最後まで出し切ってください」と続けて、ステージはいよいよラストスパートに。 バンド寄りのアレンジを施したスピード感のある曲を連発。 声は熱くもスタンドでクールに歌っていたKIHOWが、マイクを手に取りセンターに出る。自らクラップして煽り、観客も手を叩き、「Crazy Scary Holy Fantasy」へ。怒涛のシャッフルビートに乗って、速射砲のように言葉を叩き込んでいく。間奏ではTom-H@ckもお立ち台に上って、ギターソロを見せた。 間髪入れずキラーチューンの「JINGO JUNGLE」に行くと、観客は最初からジャンプして、さらに盛り上がる。KIHOWとTom-H@ckが同時にお立ち台に上がる場面もあり、「ウォウ、ウォウ、ウォウ」の合唱で一体感も高まった。めくるめく熱気に、KIHOWは「最高ーっ!!」と叫んだ。 ラストは「みんな最後に声を出して!」と、「We’re shouting」「Oh Yeah、Oh Yeah、Oh Yeah」のコール&レスポンスのウォームアップを繰り返す恒例からの、「TIT FOR TAT」になだれ込んだ。「オイ! オイ!」とジャンプして拳を突き上げる観客に、KIHOWは歌いながらさらに「声出してー!!」と随所で叫び続ける。 Tom-H@ckもストロークする腕を回して拳を上げながら、凄まじいほどのコール合戦となり、会場が熱くひとつになった。オチサビで一度クールダウンしたあと、また、「We’re shouting」「Oh Yeah、Oh Yeah、Oh Yeah」が繰り返される。 「ラスト行くよー!」で最後に最高潮に達して、大きな拍手が沸き起こる中でフィナーレ。ふたりが深くお辞儀をしてステージを去り、終演のアナウンスが流れたあとにも再び拍手が起こり、熱気の余韻はいつまでも冷めやらなかった。 Text:斉藤貴志 <ライブ情報> MYTH & ROID One Man Live 2024 Spring Tour "VERDE" ※終了公演は割愛 4月20日(土) 仙台 MACANA 開場17:30 / 開演18:00 4月27日(土) 大阪・心斎橋SUNHALL 開場17:30 / 開演18:00 4月28日(日) 名古屋 SPADE BOX 開場17:00 / 開演17:30 5月12日(日) 東京・Shinjuku BLAZE 開場17:00 / 開演17:30