羽生はGPファイナルで完全復活できるのか
グランプリシリーズの第6戦となるNHK杯の男女シングルフリーが29日、大阪のなみはやドームで行われ、男子フリーでは、SPで3位だった村上大介(23歳、陽進堂)が、逆転で初優勝、SPで5位と出遅れていた羽生結弦(19歳、ANA)は、プログラムに2つ入れていた4回転ジャンプをミスして4位に終わった。11月8日に中国杯で負った全身5箇所の大怪我から奇跡的に短期復帰したが、結果も伴っての完全復活はお預けとなった。それでもGPの上位6人しか出場できないグランプリファイナル(12月12日からスペイン・バルセロナ)への出場権を得た。羽生は、2週間弱後のGPファイナルで完全復活を果たせるのだろうか。
その瞬間、なみはやドームを不気味な静けさが包んだ。 重厚な「オペラ座の怪人」の音楽と共にスタートした羽生のフリー演技。その冒頭にプログラムされた4回転サルコウジャンプは、タイミングを失ったまま、スピードダウン。2回転で終わる。続いて4回転トゥループジャンプ。今度は、3回転になって、着氷に失敗して転倒した。後半には「3回転アクセル+1回転ループ+3回転サルコウ」のコンビネーションジャンプの入りが、また2回転になってしまう。最後の3回転ルッツも着氷後にバランスを少し崩した。 演技を終えると、無表情のまま、一瞬だけニヤっと自虐的に笑った五輪王者は、膝に手をおいたまま息を整えると、悔しさを表すようにパーンと足を叩いた。 「終わった」 怪我のハンディを負いながらも滑りきった羽生は、そう呟いた。 試合後、その言葉の意味を問われた羽生は「絶望的な『終わった』ですね。次の試合がどうなるかわからないですが、まずこの苦しい試合が終わった、という若干のあきらめが混じった『終わった』です」と言った。 ジャンプのミスは致命的で5コンポーネンツの82.48点は、2位のポイントだったが、得点は、151.79点と伸びずに、SP、FSの合計229.80点で4位に終わった。 「怪我の影響だったり、練習できなかったから(失敗した)と思われると思うんですけど、そうじゃなくてこれが自分の実力だなと感じています。(4回転ジャンプに失敗したのは) )曲に慣れていないのが、大きなところです。6分間練習でも、(4回転)トウループには若干の不安がありましたけど、練習は練習だし(4回転)サルコウに関しては朝の練習から調子が良かったのですが、これが今の実力です。わかったのは、自分の弱さですね。(怪我をした)前回の大会では、痛かったですけど、全部(4回転)を回れているんですよ。ということはできるはずなんです。それが、できないということは何かが足りないんです。自分の甘さだし、これから練習、試合に臨んでいくために越えなければならない壁だと思っています」