独Lilium社、欧州航空安全機関から設計組織承認を取得。 電動ジェットエンジンVTOL機の商用化に向け一歩前進
リリウムジェット開発の背景はニーズの多様化にあり
2023年11月27日(現地時間)、eVTOL機(電動垂直離着陸機)を開発する独Lilium(リリウム)社は欧州航空安全機関(EASA)の設計組織承認(DOA)を取得したことを発表した。設計組織承認は、EUが責任ある航空機メーカーと認めた組織に対して与えられ、承認の範囲内での設計活動、追加検証なしでのコンプライアンス文書の受け入れなどを行うことが可能になる。 【写真】リリウム社のeVTOLをもっと詳しく見る リリウム社によれば、開発中のeVTOLは200kmまで(将来的には500kmまで)の範囲で、都市間を最大300km/hで結ぶ環境に優しい電動航空機として構想が練られている。日本では“空飛ぶクルマ”と呼ばれている「アーバンエアモビリティ(UAM)」のように、飛行速度が遅く、航続距離の短いエアモビリティとは異なり、巡航飛行時の効率性に最大限考慮したものだ。 また、実用的な飛行機であるためには、採算性、つまり運行コストをペイできるだけの乗客・貨物の積載力が求められるため、一般的な“空飛ぶクルマ”のような、少人数しか乗れないモビリティではない、大人数を輸送可能なスペックが必要である。 さらに、人口密集地での低コスト運航には、既存インフラ(ヘリポート等)で離着陸できる大きさでなければならず、ホバリング飛行中の騒音レベルも低く抑えなければならないなど、課題が山積しているのが現状というわけだ。 以上を簡単にまとめると、 ・運航中のCO2排出ゼロ ・効率の良い巡航飛行が可能な機体設計 ・都心部のヘリポートに離着陸可能な機体サイズとVTOL性能 ・都市部での飛行が可能な低騒音設計 ・多人数が搭乗可能な積載力 が求められているということになる。 こうした、課題をクリアするためにリリウム社が考え出したのが “電動ジェットエンジン” による“垂直離着陸機” という画期的なアイディアだ。(注:リリウム社は「Electric jet engines(電動ジェットエンジン)」と呼称しているが、実際には電動モーターを用いたダクテッドファン形式であるように見える)