日本株浮沈の鍵握る企業決算、賃上げと円安悪影響の吸収力が焦点に
(ブルームバーグ): 国内3月期企業の決算発表シーズンが始まる中、歴史的な賃上げと為替の円安という企業にとってのコストアップ要因が及ぼす影響に投資家の視線が集まっている。日本株が一段高となるには自動車など一部の輸出セクターに偏らず、内需セクターを含む幅広い業種の明るい業績見通しが必要だ。
東証株価指数(TOPIX)は過去1年間で30%以上上昇し、イタリア(24%)や米国(23%)、ドイツ(14%)など主要国を軒並みアウトパフォームした。インフレ経済への転換やコーポーレートガバナンス(企業統治)改革に対する期待に加え、円安による輸出企業の業績押し上げもプラスに寄与。実際、業種別上昇率で68%高とトップだったのは自動車を含む輸送用機器だ。
一方、足元では半導体受託生産大手の台湾積体電路製造(TSMC)が市場見通しを引き下げたことなどを材料に、時価総額上位の東京エレクトロンなど半導体関連銘柄が大幅に下落。また、円が対ドルで節目の155円を突破、34年ぶりの安値を連日で更新しており、原材料やエネルギーなどの輸入コスト上昇への懸念が日本株全体の上値を重くしている。
ブルームバーグのデータによると、TOPIXの向こう12カ月の1株利益(EPS)予想は170.3円と、実績値から3.9%増える見込み。これに対しJPモルガン証券では、TOPIX採用企業の2025年3月期の純利益は4%減と予想した。西原里江チーフ日本株ストラテジストらは、今回の決算では保守的なガイダンスが予想されるが、上方修正される可能性はあると指摘する。
東京証券取引所に上場する企業の約6割に当たる3月期決算の発表をきっかけに日本株が再浮上するには、過去1年間にTOPIXをアンダーパフォームしているサービスや陸運、空運、小売り、食料品といった内需セクターが良好な業績計画を示し、株価が巻き返せるかどうかは重要なポイントだ。
今年の春闘では平均賃上げ率が5%を超え、30年以上ぶりの高水準となった。賃上げは企業の販売・一般管理費の増加要因となる半面、家計を潤すため、内需セクターの企業にとっては今後の収益増加につながる可能性がある。政府は日本経済の脱デフレ化を確実にするため、さらなる賃上げを求めている。