【まとめ】兵庫県知事に不信任決議◆失職か議会解散か?これまでの経緯を振り返る
◇「公益通報かどうか」も争点
百条委の調査では、パワハラ疑惑などを文書で告発した職員の行為が、勤務先での不正を告発する正当な「公益通報」に当たるかどうかも争点となっている。公益通報者保護法では、通報を理由とした降格や減給といった不利益な取り扱いを禁止し、「通報者捜し」を防ぐ措置も求めているからだ。 参考人として出席した公益通報者保護制度に詳しい山口利昭弁護士は、職員が報道機関や県議に告発文書を配布した行為は「外部公益通報」に当たると説明。職員を保護しなかった県の対応は同法違反との考えを示し、「誰がどんな目的で文書を書いたか調べることはあり得ない」と指摘した。 これに対し、斎藤知事は、当時の片山副知事らに「誰が出したか徹底的に調べてくれ」と指示しており、県は別の弁護士に法的な意見も聞いた上で、5月に職員を停職処分にしたと主張。告発内容がうわさ話を集めていることなどを理由に、「誹謗中傷性が高い文書で公益通報に該当するとは思っていない」と反論し、平行線をたどった。 組織内の問題を指摘する声をいかに守り、組織風土の改革につなげていくか、という課題も浮き彫りになった。 ◇全会一致で不信任 側近だった副知事の辞任に続き、理事の降格や総務部長の病欠も相次ぐなど孤立を深める斎藤知事だが、「未来の兵庫のために頑張りたい」などと述べ、一貫して続投する考えを表明。しかし、前回の知事選で斎藤知事を推薦した日本維新の会が9月9日に、辞職と出直し選挙を申し入れた。自民党や公明党、共産党など4会派と無所属議員も同月12日、維新に続き県議会の全議員(86人)が辞職を求める異例の事態となった。それでもなお、斎藤知事は「4年間の任期を務めさせていただくことが県民からの負託だ」と話し、辞職を再度否定した。 議会内では、辞職勧告決議案を検討する動きもあったが、一連の県政の停滞に危機感を募らせた全議員は同19日の本会議で不信任決議案を共同提出。不信任決議は「県政に長期にわたる深刻な停滞と混乱をもたらした政治的責任は免れない」と批判しており、採決の間、斎藤知事は口を一文字に結び、硬い表情を崩さなかった。不信任決議は全議員の賛成で可決され、県議会が退陣を求める強い意思を突き付けた形だ。 斎藤知事は10日以内の議会解散か失職かの選択を迫られる。失職や辞職した後、再び知事選に出馬する可能性もあり、出直し選挙になれば、誰が知事にふさわしいか、県民の判断に委ねられる。総務省によると、知事の不信任決議を可決した例は過去に4回あり、いずれも失職するか、自ら辞職しており、議会を解散した例はない。 議会閉会後の記者団の取材に対し、斎藤知事は「しっかり受け止めなければならない重い状況だと認識している。どのタイミングかは申し上げられないが、しっかり考えて決断したい」と語り、今後の判断に注目が集まる。