『「超」整理法』シリーズで知られる野口悠紀雄が、シニアになったら文章は「音声入力」で書くことを薦める理由
「音声入力」は、シニアの味方
それでも、文字の入力はかなり面倒です。ただし、これについては、音声入力という強力な手段が利用できます。これを使えば楽々と入力できます。音声入力は、とくにシニアにとっての力強い味方です。私は日常的に音声入力で原稿を書いています。 ただ、これを知らない人が意外に多いので驚きます。「最近、手がうまく動かなくなったので、キーボードから入力するのが面倒になった」という話を聞いたので、「音声入力でやればよいではないか」と助言したところ、「非常によいことを教えてくれた」と言って喜んでいました。 これまでは、スマートフォンから音声入力するしか方法がありませんでしたが、いまはウィンドウズのPCでも音声入力ができます。検索をする場合も、いちいちキーボードから入力するのでなく、音声で入力するほうが簡単かもしれません。 なお、音声認識が可能になったのは、それほど昔のことではありません。私の若い時代に、そうした技術はありませんでした。そして私は、その技術を非常に強く求めていました。1990年代にⅠBMがデスクトップPCで用いる音声書き起こしソフトを作ったのですが、ほとんど使いものになりませんでした。 音声認識が実用になったのは、スマートフォンができてからです。私は、夢の技術が登場したことに感激し、『究極の文章法』(講談社、2016年)という本を書いたほどです。そして、この数年、さらに目覚ましく進歩しています。 文章を書くとき、私は音声入力を活用しています。夜寝ている間に考えていたことを、目覚めた直後に1000字くらいの文章にすることもあるし、散歩中の30分間で3000字の文章を書くこともあります。新しいデジタル技術は敵であるどころか、心強い味方です。 デジタル技術が味方だと分かれば、それを習得することの意味合いも変わってきます。必要に迫られて仕方なくやるのではなく、それを利用して自分を強くして、人生を豊かにする。そう考えられるようになれば、楽しんで学べるようになるでしょう。 文/野口悠紀雄 写真/shutterstock ---------- 野口悠紀雄(のぐち ゆきお) 1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省。72年エール大学でPh.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専攻は日本経済論。近著に『2040年の日本』(幻冬舎新書)、『超「超」勉強法』(プレジデント社)、『日銀の責任』(PHP新書)、『どうすれば日本人の賃金は上がるのか』(日経プレミアシリーズ)、『プア・ジャパン』(朝日新書)、『「超」創造法』(幻冬舎新書)ほか多数。 ----------