東日本の物流の要に 2015年10月に県内区間全線開通した圏央道 雇用、税収にも大きく寄与 埼玉の近隣6都県の中核都市に約1時間半でアクセス 沿線地域には大型物流施設をはじめとした企業立地が相次ぐ
関東のほぼ中央に位置し、首都東京のみならず、東北や北陸など東日本全域への物流の“ハブ”として重要な役割を担う埼玉県。その経済発展に欠かせないのが、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の存在だ。2015年10月に県内全区間が開通。近隣6都県(東京、神奈川、千葉、茨城、栃木、群馬)の中核都市に約1時間半で行けるようになり、沿線地域には大型物流施設をはじめとした企業立地が相次いでいる。 埼玉と群馬の県境“空港整備”を構想、直接海外と結ばれる可能性 10市町が連携
圏央道の整備計画は総延長約300キロ。都心の交通緩和を目的に、1985年に建設省(現・国交省)と日本道路公団(現・東日本高速道路)が共同で事業化。96年3月に東京・青梅インターチェンジ(IC)―鶴ケ島ジャンクション(JCT)間19・8キロの開通を皮切りに、2017年2月の茨城県の境古河IC―つくば中央IC間の開通で全体の9割が完成した。 東名高速と東北道方面に抜ける都内の交通量は、県内全区間が開通した15年10月(桶川北本IC―白岡菖蒲IC間)を境に激変。それまで首都高経由で抜けていた車両は1日当たり4300台から2300台に減少。一般道を含め、圏央道の内側を走る“通過交通”は約3割に減少した。 ◇ 企業誘致の面でも県内経済に与えた影響は大きい。国交省によると、05年1月から15年12月の11年間で計838社が本社機能や物流拠点を県内に新規立地。そのうち約6割(479社)が圏央道周辺に集中している。1万8005人の雇用を創出し、企業の投資額は6749億円に上る。県民税や事業税などの税収も川島IC―桶川北本ICが開通した10年から、久喜白岡JCT―境古河ICが開通した15年の5年間で約560億円増加した。
県内全区間が開通する直前の14年度地価上昇率(工業地)は県平均0・6%であるのに対し、圏央道沿線地域は2・3%。同調査から半年後に開通した幸手市は5・6%と最も高い伸び率を示した。 ◇ 神奈川県厚木市と東松山市に工場がある機械部品メーカーでは、東松山ICから神奈川県の相模原愛川ICの所要時間が約31分間短縮。同社では「従業員の行き来が楽になり、時間を有効活用できている」と話す。化粧品・日用品の卸売会社は15年8月に白岡菖蒲IC近くに大型物流センターを開設。入間ICとの所要時間が75分から45分に短縮した。 県倉庫協会の島田豊保常務理事は「貨物の配送時間短縮はガソリン代などの輸送コストに直結するので、その整備効果は計り知れない」と歓迎。首都直下地震などの有事にも「都心から扇状に広がる高速道路網の要として埼玉の果たす役割は大きい。圏央道周辺の地盤も固く、災害支援物資の供給基地としても役立ちたい」と話す。