タクシー運転手足りず、流しも予約も捕まらない…環境改善へ「予約料金」導入広がる 狙いは配車の効率化と待遇改善 運賃上乗せに利用者の心境複雑
事前に時間を指定してタクシーを呼ぶ際、「予約料金」を運賃に上乗せする取り組みを鹿児島市の鶴丸交通が11月から始める。導入の背景には、新型コロナウイルス禍で顕著化した運転手不足に、5類移行後の需要回復が追いつかない現状がある。配車の効率化と待遇改善が狙いで、業界も動向を注視している。 【写真】鶴丸交通の配車アプリの予約画面。11月からは「予約料金」を導入する=24日、鹿児島市
予約料金は、同市の事業者としては初めてで、県内では6月に本格導入した姶良市のあいら交通に続き2例目。鶴丸交通は1時間前からの予約で500円、あいら交通は2時間前からで670円を上乗せする。 鶴丸交通によると、平日午前6~9時台の予約運行は平均30~40件あるが、倍以上の件数を対応できずに断っている。主因となる運転手不足は業界全体の悩み。流しのタクシーもつかまりづらいことから、予約の申込件数自体がコロナ禍前より増えているという。 高齢化やコロナ禍による運転手の離職は、事業所の廃業にもつながった。あいら交通の営業エリアでは、ここ数年間で4社から2社へ減ったこともあり、予約が増えていた。導入後、1日当たりの予約件数は激減したものの、運行管理の担当者は「予約だと運転手は1件20分前後の拘束時間が生まれ、他の配車にも影響が出ていた。今は配車がスムーズになり、輸送効率は向上している」と話す。
タクシーは、通院や買い物の際の交通手段として重宝されている。一方で、初乗り料金は昨年8月、県本土などで700円に値上がりしたばかり。さらに予約料金が上乗せとなることに、市民はどう思うのか。 鹿児島市の会社員男性(51)は「ただでさえタクシーは運賃が高くなった。予約料金が導入されると、ますます利用しづらくなる」と話す。 月5回ほど夫の通院などで利用する同市の無職女性(88)は、運転手不足を理由に配車を何回か断られた経験がある。「金額的な負担は大きいが、希望する日時の配車がスムーズになるなら喜ぶ人も多いはず」と理解を示す。 九州運輸局によると、予約料金の導入は福岡や熊本で広がりつつある。鹿児島県タクシー協会の山口俊則専務理事は「運転手の賃金向上につながった他県の事例も聞いている」として、今後の展開に期待する。 導入へ向け、鶴丸交通は配車アプリなどで事前告知を始めている。同交通を運営する市丸グループの立神剛総務課長は「導入は大変心苦しいが、運転手の待遇を改善し、タクシー不足の解消に努めていく。ご理解いただきたい」と呼びかけた。
南日本新聞 | 鹿児島