美ノ海（右）を寄り切る尊富士（撮影・北村雅宏）

　「大相撲春場所・６日目」（１５日、エディオンアリーナ大阪）　 　新入幕の尊富士が美ノ海を寄り切って、土つかずの６連勝とした。最速タイとなる初土俵から所要９場所で幕内に駆け上がったホープ。堂々のトップ並走で、荒れる春場所を盛り上げる。横綱照ノ富士は平幕隆の勝に完敗。３日連続の金星配給で４敗目を喫した。大関豊昇龍は翔猿に寄り切られて２敗目。平幕大の里は全勝を守ったが、小結阿炎は大関琴ノ若に突き落とされて初黒星。全勝は尊富士と大の里の平幕２人となった。 　わずか１秒８。白星を重ねる勢いそのまま、一気の電車道で決めた。鋭い踏み込みから頭で当たった尊富士が美ノ海を圧倒した。左を差して右をおっつけながら前へ。鳥取城北高と日大の６年先輩を、瞬く間に土俵の外へ運んだ。 　今場所で最高とも言える完勝。「納得する相撲かなと。内容は日に日に良くなっていると思う」と手応えを明かした。まだ大銀杏（おおいちょう）も結えないちょんまげ頭。落ち着き払った表情や語り口とのギャップが、大物感を醸し出した。 　新入幕で初顔ばかりとなる対戦でも実力を発揮。照ノ富士をはじめ、翠富士や錦富士ら兄弟子に相手の長所と弱点をリサーチする。「アドバイスされるだけじゃなく、自分で考えないといけない。いろいろ聞いてイメージしながらやりました」と、自分なりに立てた対策が快進撃を支える。 　新入幕の初日から６連勝は、２０１４年秋場所の逸ノ城以来。喜びいっぱいかと思いきや、尊富士は「もともとそんな感情とかはない。やるだけやれば結果がついてくる。相撲で喜ぶことはないです」と淡々。喜ぶのは「稽古休みとか。『マジか！？』って思います」と明かし、笑いを誘った。 　初土俵以来の通算成績は６２勝８敗。勝率は驚異の８割８分６厘を誇る。「相撲に対しては、喜びより（相撲をとれる）感謝しかない」と尊富士。ひたすら強さを求めるストイックな２４歳が、浪速の春に旋風を巻き起こす。