現時点で気になる選手は伊藤と一二三

――技術的には？ 「一人一人、個性が違う。教える中身も、それぞれ違ってくるので、実際に中に入って選手を見なければ、どう教えていくかは、まだなんとも言えない。先ほどの絵の具の話ではないが、一人一人色が違うのだ。ただバットをレベルに振る体の使い方だけは教えたい。若手だけではないが、阪神の打者の特徴として力のあるストレートに弱い。打ち損じたりファウルになる。バッティングは崩されてもいい。崩された中で、タイミングを取れる順応力を磨けばいいのだ。そこが阪神の打者には欠けていて決まった型の中でしか打てない。緩いボールを打つのもひとつの練習方法だろう。レベルにバットを振る体の使い方を覚えれば、自然、ポイントも前になって力のあるストレートに対応ができるようになる。そういうものを見つければ、後は反復練習だ」 ――気になる選手は？ 「長嶋さんが松井秀喜を4番打者1000日計画で徹底して鍛え上げた。でも、そういう“区別”というものは、私が選手を知らなければできないし、まだ見当もつかない。全体的にレベルアップするのが理想だろう。ドラフトで選ばれた時点で選手全員が可能性を持っているのだ。あえて現時点で気になる選手と聞かれれば、今日の会談でも名前が出ていた伊藤。それに一二三。伊藤は強い体を持っているのが魅力。リーダーシップも持っている。この1年が勝負と考えて本人も取り組まねばならないだろう。だが、伊藤だけでなく若手が1軍の試合に出るためには守備力を身につけておかねばならない。ディレクターとして、バッティングだけでなく、そういう面についても目配せをしたいと思っている」 ――“これぞ”という選手は長嶋さんのように自宅の地下に呼んでバットを振らせますか？ 「私から押し付けることしない。だが、本人が目の色を変え、時間を惜しんで私の家に押しかけてでも見て欲しいというなら、もちろん、とことん付き合うつもりだ」 ――時間はかかりますか？ 「選手の気持ち次第だろう。魔法みたいに3割打者が、何人も生まれることは難しいかもしれないが、1年やれば形は見えてくる」 　　　　　　　　　　　 （聞き手・本郷陽一／論スポ、アスリートジャーナル）