非構造化データの活用でワークフローを自動化--Boxに聞く生成AI戦略
世界に遅れることなく日本が生成AIを活用するには 2024年の企業ITでは、業務を支援する「AIアシスタント」がトレンドの1つだ。現状のAIアシスタントは、一般的な情報に基づくコンテンツの生成でユーザーをサポートする程度だが、Kus氏が示したAIエージェントは、企業や組織ごとの環境に基づくモデルも活用してより汎用(はんよう)的に業務を高度にサポートするという。 Box Japanの古市氏は、「米国でもまだAIアシスタントの利用が中心だが、今後AIエージェントを活用してワークフローを自動化していくようになり、日本もこの流れをたどるだろう。ただ、日本は新しい技術やサービスを取り込むことに対してリスクやコストを懸念してしまいハードルが高い。しかし日本がどうであろうと世界はデジタル技術で突き進んでおり、それを活用した新しい仕事のやり方がいや応なしに始まっている。日本も変わっていかなければならない」と述べる。 日本でもDXの実現に向けて、業務のデジタル化による効率化や生産性の向上に乗り出す企業が増えてきている。そのためにIT投資を大幅に増やすまでにはなかなか至っていないが、古市氏によれば、オンプレミスのファイルサーバーをBoxにリプレースして、非構想化データの活用に取り組む導入事例が少なくないという。 佐藤氏は、その代表的な事例としてアサヒグループジャパンを挙げる。「同社は、当初からDXで各部門から多様なニーズが上がり、時間をかけてデータ基盤を構築していたのでは間に合わないと考え、IT部門主導によりユーザーが求めるデータをすぐに提供できるようにBoxで『コンテンツレイク』を整備された。コンテンツレイクに非構造化データのさまざまなドキュメントを蓄積し、コンテンツレイクの上位レイヤーにAPIを置いてアプリケーションレイヤーから活用するという“区画整備”をされたケースになる」 両氏は、同社の顧客がファイルサーバーをBoxに置き換えていることにより、結果としてAIや生成AIのような新しいテクノロジーを活用しやすい環境が整うと説明する。 「日本はコストの関係で既存のシステムを置き換えないと新ソリューションを導入しづらく、日本でのBoxの利用は、社内ファイルサーバーの置き換えが多い。一方で、海外はコラボレーションを目的とした導入が中心でファイルサーバーを残すことも多い。日本の方がBoxで集約管理しており、そこにAIが入りつつある。Box AIへのクエリーの発行は日本が上位を占めており、Box AIの活用という観点では既に明るい材料がある」(佐藤氏) また、ワークフローのデジタル化で効率性を求める動きは中堅・中小企業でも活発になりつつあり、国内SaaSベンダー各社の競争が激化している。 古市氏は、日本の顧客では中堅・中小企業が8割ほどを占め井村屋グループの事例が代表的だとし、「中堅・中小企業はビジネスの競争激しく動きも速いが、いかにコストを下げて生産性を上げるのかをとても意識している。課題は人材で、ITの活用を推進できる人材がいるかどうか、経営者が理解しているのかが鍵になり、これらが備われば一気に動くだろう」と述べる。中堅・中小企業顧客に向けては、Boxを特徴付けたエコシステムパートナーとの提供ソリューションの多様化が鍵になるとした。 Boxをはじめクラウドベンダー各社がAI機能を次々に投入している一方で、企業や組織がセキュリティを確保したオンプレミス環境やプライベートクラウドで自前のデータによるAIモデルを開発していく動きも見られる。 古市氏は、「AIはトレーニングとデータが増えるほど賢くなるので、多くのLLMが世の中のデータを取り込み、精度を高めているわけだが、限られた社内データでトレーニングしたAIを社内業務に活用するとなると悩ましくもある。そのような自社専用AIがどこまで賢くなれるのかは分からないが、自社特有の業務に特化して活用されるだろう。BoxのAIは、あくまでドキュメントを起点にした汎用(はんよう)的な業務を対象にしており、ユースケースに応じてすみ分けていくだろう。ただし、企業ごとに学習されたAIモデルをBoxにつないで使うこともできる」と説明している。 (取材協力:Box Japan)