<高校サッカー>コンゴDNAで矢板中央が逆転勝利!
真面目さが買われてキャプテンを託された星は今夏、数週間ほどBチーム降格を命じられている。故障明けで思うようにプレーできず、イライラした思いを高橋監督にぶつけてしまったからだ。 チームを背負う責任感が強すぎたと、指揮官もわかっていたのだろう。しばらくして「トップの練習に参加したら」と星に声をかける。自問自答を繰り返し、自分の甘さと弱さに気がついた星は、精神的にひと回り大きくなって復帰。栃木県大会を無失点で制した守備陣をけん引した。 AKB48の島崎遥香が「タイプです」と、長身をかがめながらはにかむ森本は、幾度となく悲しい思いをしてきた。たとえば中学のとき、自分たちのチームがコーナーキックを獲得するとこんな指示が飛び交った。 「あの黒人を止めろ、と。もちろん、点を決めてやりましたけど」 20歳になったときには、日本国籍を選択するとすでに心に決めている。「食感がいいから」とスルメイカを好む18歳は、星とともに進学する駒沢大学で心技体をさらに磨き、将来的には日の丸を背負う夢を描く。 「野球のオコエ選手や陸上のサニブラウン選手には刺激を受けていますし、その流れに乗っていきたい。大学4年間で活躍して、オファーがきたらそのクラブで一生懸命プレーしたい」 父の母国コンゴの公用語であるフランス語で、キョーワァンは「偉人」を、ヒマンは「希望」を意味する。劣勢を強いられながらも高さと強さ、何よりもリーダーシップでチームを鼓舞し、2点目を許さなかった星。痛みをこらえたプレーでチームの救世主となった森本。名前通りの活躍を演じた攻守のエースに、高橋監督も手応えを感じている。 「星に森本、川上、そして真下。みんな身体能力が高い。このチームの得点の半分以上はセットプレーから生まれている。特徴のあるチームに仕上がってきましたね」 年が明けて2日の2回戦の相手は鳴門(徳島)。野球界と陸上界に続き、高校サッカー界でも驚異的な身体能力をその体に搭載するハーフ選手が旋風を巻き起こそうとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)