ありえない“コンクリの塊”、鳥の対策もおろそかに…韓国・死者179人の航空機事故をまねいた“危険すぎる管理実態”〈在韓記者が解説〉
他の空港より滑走路が短かった
韓国の主要な空港である仁川(インチョン)国際空港の滑走路は3.7km、金浦(キンポ)国際空港は3.6km。韓国内の大半の国際空港は3km以上の滑走路を確保しているのに比べ、務安国際空港の2つの滑走路の長さは2.8kmと比較的短いのだ。 さらに務安空港は、2025年を目標に滑走路を3.1kmまで延長するための工事をしていた。そのため、今回の事故機が着陸した19番滑走路の末端の300mは使用できないように塞がれていた。結局、事故機が利用可能な滑走路の長さはわずか2.5km程度だった。 19番の滑走路から264メートル離れた地点に設置されている高さ2メートルの丘は、事故を大きくした最大の要因として指摘されている。この丘は一見、土の山に見えるが内部はコンクリートで作られている。2023年に補強工事を通じて丘の上に30センチ程度のコンクリートの天板を敷き、その上にローカライザー(方位角表示施設)を設置したため一層堅固になった。 世界的な航空安全専門家らが、「この堅固なコンクリートの丘こそ、今回の惨事の最大の原因だ」と指摘している。国際的な安全規定には、「ローカライザーは非常時に飛行機がぶつかったら簡単に壊れるように設計されなければならない」とあるためだ。
コンクリートの丘について説明していなかった
そのうえ、務安空港はコンクリートの丘について操縦士にきちんと説明していなかったという。韓国メディアのインタビューに応じたある操縦士は、「この丘がコンクリートの塊だったという事実を知らなかった」と証言したが、「事故機の操縦士も丘がコンクリートではなく土の山だと思ってそこに突進したのではないか」という推測も出ている。
渡り鳥の飛来地に囲まれているにもかかわらず…
そもそも、務安空港が渡り鳥の飛来地に囲まれているにもかかわらず、バードストライク対策などの安全管理がずさんだったという批判も出ている。務安空港の新たな設置は1998年に当選した金大中(キム・テジュン)大統領の選挙公約だった。しかし、近距離には光州(クアンジュ)空港と麗水(ヨス)空港がすでにあったうえ、務安地域が有名な渡り鳥の飛来地であることから環境団体などを中心に空港建設に反対する世論が強かった。 2003年に盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権に入り、建設が頓挫しそうになることもあったが、この地域出身の大物政治家である韓和甲(ハン・ファガプ)議員肝煎りの政策として推し進められ、2007年についに開港した。だが、総人口300万人程度の光州市+全羅南道地域ではすでに既存空港だけでも十分な状態だったため、務安空港の年間利用客は当初の予想値の0.2%水準である1万8000人(2012年基準)にとどまり、韓国の14の地方空港(仁川空港を除く)の中で最も赤字幅が大きい空港となった。 赤字が大きいだけに、空港管理面でも様々な問題点が明らかになった。まず、周辺に4ヵ所渡り鳥の飛来地があり、バードストライク発生率が地方空港の中で最も高かったにもかかわらず、鳥を追う安全要員は4人のみ。事故当時は、そのうちの1人だけが勤務していた。 高強度のコンクリートの丘もコスト削減のためであった可能性が高い。2007年開港当時から設置されていたコンクリートの丘は2023年に補強工事を経て、上部にローカライザーと共に「アプローチライト」等の照明施設を設置された。これに対して航空専門家たちは「照明施設とローカライザーを一緒に置くケースはほとんどない」として、「照明施設の重さを支えるためにコンクリートの丘をさらに補強したのではないか」と指摘している。