人や物資が限られる中で迫られる決断と葛藤…“2人に1人が高齢者”被災地・輪島市の福祉避難所の現実 心を病んでしまう職員も…【キシャ目線2024】
■元気な入所者を広域避難してもらいスペース確保も…わずか2日で満員に
記者が取材で訪れたのは、石川県輪島市で障害者のグループホームなどが入る福祉施設「ウミュードゥソラ」。通常の避難所にいる被災者のうち、災害派遣医療チーム「DMAT」が、生活に特別なサポートが必要だと判断した人たちを地震発生8日目の夜から受けて入れている場所です。 許可を得て、施設の中を案内してもらいました。施設内は大きく分けて2つのスペースがあり、もともとの入所者の人たちが生活しているスペースと、避難者の人たちが生活するスペースがありました。 施設の運営会社の理解や協力があって、避難者らを受け入れるために、入所者のうち元気な人たちには広域避難をしてもらうなどして、避難者を受け入れるスペースを作り出すことができたといいます。ただ、入所者の全員が施設外に移動することはできないので、施設の中でこれまで通り生活している人も10人程度いるということです。新たに作り出せたのは、学校の教室1部屋分よりやや広いくらいのスペースです。通路などの動線は確保されていますが、ここに約30人の避難者がぎっしりと身を寄せていました。避難者の受け入れを始めて、わずか2日で満員になってしまったといいます。
福祉避難所の運営をサポートする在宅医療専門の医療法人オレンジ(福井市)の代表で、医師の紅谷浩之さん「それだけ通常の避難所では避難生活が難しく、特別な支援を必要としている人たちが多くいるという証です。本当はもっと受け入れたいのですが、どうしても1つの施設だけでは限界があります」
■高齢者の関連死が増えるおそれ…「2~3日寝込むと数週間分の体力低下も」
この福祉避難所では、朝昼晩と、おにぎりなどのほかに味噌汁など温かい食べ物も提供されます。近くの施設などで使わなくなった電動リクライニングベッドなどもあり、通常の避難所よりもかなり環境としては整っている印象を受けました。飲み物も水やお茶のほかに、オレンジジュースやコーラといった甘い飲み物などもあり、被災者らに人気でした。 市内の他の避難所から移ってきた車いすの男性(60代)「前の避難所はご飯もあまりあたらなかった。出てくるのはパンばかりで、最後に残ったのは俺1人だけ。車イスより一回りくらい広いスペースで、目の前に電気ストーブを置いて、毛布をかけて車いすで寝起きしていた。ここは快適で移ってこられてよかった」 物資は届き始めている一方で、足りない物もあると紅谷さんは話していました。 紅谷さん「物資はほぼほぼ十分にありますが、薬だけは不足しています。あと一番不足しているのは人手です。医師や看護師など圧倒的に足りていない」 実際、取材した時点で避難所では新型コロナウイルスの感染者が2人、病名は不明なものの発熱の症状がある人が2人いましたが、人手やスペースの問題で隔離することが難しく、薬も十分にないため、マスクをして飛沫の拡散を防いだ上で、大部屋でほかの避難者と一緒に生活を送らざるを得ない状況でした。 また、紅谷さんが明かしたのは今回の地震の避難者たちの特徴です。 紅谷さん「驚いたのは過去の災害と比べても避難所に来る高齢者の割合が高いこと。高齢者の人たちはたった2~3日寝込んでいるだけでも数週間分の体力低下があって、特に足腰の筋力低下が激しい。何日か前まで元気だったのに、気づいたときには自分で歩くことができないという高齢者も多くいて、病院に搬送されていくケースもある」