【県川柳賞・文学賞】若い感性さらに磨いて(12月14日)
44回目を数える今年の県川柳賞には、4年前の679作品に次いで2番目に多い594作品の応募があった。とりわけ、中学生から20歳未満を対象とした青少年の部には、過去最多の460作品が集まり、小学生の部には84作品が寄せられた。今後も創作活動を通じて若い感性にさらに磨きをかけてほしい。変化の激しい社会全体に目を見開くきっかけにもなる。 〈金メダル母にも一つ捧げたい〉〈犬よりも優先順位低い僕〉。家族への愛情に心が温まり、ユーモアが笑顔を呼ぶ作品が目立った。〈気を付けよネットの中は危険だぞ〉〈何もない何にもないが何か良い〉。社会問題に注意を促す鋭い視点や、他者にはない言葉の組み立てなども光り、審査委員をうならせた。 青少年の応募は今年の第77回県文学賞でも増えている。「小説・ドラマ」「エッセー・ノンフィクション」「詩」「短歌」「俳句」の全5部門でいずれも前年を上回る計56作品が集まった。内容も充実し、小説・ドラマ部門では田村美結さん(橘高3年)が高校生としては11年ぶりに一般の部で奨励賞を受けた。前年の青少年奨励賞から2年連続の入選となり、審査委員からも書き続ける姿勢が高く評価された。
各賞の応募作品の増加は、本人はもちろん各学校や吟社の指導者の努力が実ったとも言える。これからも地域の若い才能を掘り起こし、導いてほしい。 川柳を詠む際は、何事にも強い関心を持ち、よく観察し、自分の考えたことや感じたことを忘れないうちにすぐにメモする習慣が大切とされる。小説やエッセーであれば、絶えず読み手を意識しながら書くのが重要といわれる。常に周囲に目を配り、相手の立場で物事を見て判断できるようになれば、子どもの創造力や社会への洞察力が養われていくだろう。 郡山市で10月に開かれた県文学賞講演会では、盛岡市在住で芥川賞候補にもなった作家くどうれいんさんが登壇した。小学生の時に作文や読書感想文のコンクールで佳作に選ばれたのがうれしく、文芸の世界にのめり込んだとの経験を紹介した。ちょっとした喜びや感動は、子どもに大きな自信を与える可能性にも着目したい。(神野誠)