フランス語からタイ語まで 幅広い言語に対応する東京・台東区の観光戦略
飲食店のハラル認証の取得を後押し
多言語のパンフレットやチラシを制作することで、外国人観光客に情報を提供することは重要な観光政策です。しかし、外国人が観光で不便を感じるのは「言葉」ばかりではありません。異なった文化や習慣を持つ外国人は、日本のマナーや作法がわからずに店との間でハレーションを起こしてしまうことがあります。 外国人観光客とのトラブルを少しでも解消するため、台東区は外国人観光客に対する道案内や接客の仕方などを学ぶ研修会“おもてなし講座”を実施しています。各国の文化や習慣への理解を深めれば、文化の違いによるトラブルは少なくなるからです。 ほかの自治体に先んじて外国人観光客の受け入れを進めている台東区ですが、課題もあります。それが、ムスリム(イスラム教徒)への対応です。最近は中東からの観光客が急増しています。しかし、台東区では、まだアラビア語のパンフレットを制作できていません。 「ムスリムと聞くと、どうしても中東のイメージを強く抱きます。もちろん、中東諸国から来日する観光客への利便性を高めるために、アラビア語の観光パンフレットなども制作しなければと思います。その一方で、インドネシアやマレーシアからの観光客にもムスリムの方がたくさんいます。台東区はムスリムの観光客にも楽しんでもらおうという考えから、区内の飲食店にハラル認証を取得する費用の一部を助成する事業を(昨年)10月から始めました」(同) イスラム教は戒律が厳しく、イスラム法で禁止された食べ物は口にすることができません。「ハラル」とはイスラム社会で“許されたもの”を意味し、イスラム法にのっとって製造・加工・料理されたハラル認証取得食品であれば、ムスリムの人たちは安心して口にできます。 日本では、まだムスリムに対する理解が浅く、ハラルへの十分な対応ができていないのが現状です。台東区内でハラル認証を取得した飲食店が増えれば、訪日するムスリムの観光客は台東区の飲食店を利用するようになります。そうした背景から、最近はハラル認証を取得する飲食店が増え、行政がハラル認証取得の後押しもしているのです。