『FFVII リバース』野村哲也氏が語る、『FFVII』の特別さとは? オリジナル版から25年以上の時を経てなお語り継がれる“あのシーン”について、その思いを語る
『ファイナルファンタジーVII リバース』ディレクターの浜口直樹氏、プロデューサーの北瀬佳範氏のインタビューに続く形で、今作のクリエイティブディレクターである野村哲也氏への単独インタビューが実施された。 『ファイナルファンタジーVII リバース』画像・動画ギャラリー そこで今回、電ファミ編集部では野村哲也氏に対し、オリジナル版『FFVII』のスタッフのひとりとして、ワールドマップだった場所がオープンフィールドへと生まれ変わったことへの思い、そしてオリジナル版から25年以上の時を経てなお語り継がれる“あのシーン”についてのお話も伺ってみた。 結果、野村氏のゲームプレイヤーとしてのユニークな一面と、ある意味では『FFVII』、そして次作『ファイナルファンタジーVIII』を遊ばれた方々への“挑戦状”的な話題が飛び出すことになった。 「野村さんって、そういう遊び方をされる御方だったのか……!」と、興味深いお話が飛び出したその模様をお届けしよう。 聞き手/シェループ、実存 ■実は本来の遊び方から外れて、自分だけの遊び方を探したくなるスタイルだった ──本日はよろしくお願いします。実は私、『FFVII』は前作のリメイク版で初めて体験した人間でして、オリジナル版のプレイ経験がないんです。それで今回、先行プレイで体験したグラスランドエリアがオリジナル版からどんな風に変わったのかというのを後で調べて、「こんなに変わったのか!」という驚きがあったんです。 野村さんはオリジナル版から『FFVII』には長らく関わり続けていらっしゃいますが、元々、オリジナル版ではワールドマップとして描かれていたエリアが今回のようなオープンフィールドへと進化して完成されたことに関し、どんな思いを抱かれていますか。 野村氏: そうですね……「やり過ぎなぐらいやったな」という感じです(笑)。本当にいろんな要素が詰め込まれたものに仕上がりました。 元々、『FF7』リメイクをやると決めた時点で、「2作目ではフィールドに出て、探索する遊びを作らなくてはいけない」という話はしていたんですね。ただ、単純に広いマップを作ればいいということではないんです。 現代のオープンワールドのゲームのように、ちゃんと隅々まで探索したくなる楽しさがあって、モチベーションを維持できるものにする……ということが必要だと考えていまして、制作面ではどんな風に組み立てながら広いマップにしていくのかというのが大きな課題でした。結果としては「やり過ぎなぐらいやった」という感じになってよかったと思います。 ──その詰め込まれた要素の中で、野村さんが「思った以上だ」と感じられたのはどの辺りになりますか? 野村氏: 元々、チャドリーの「ワールドレポート」を軸に構成していくというのは『FFVIIリバース』の制作当初から聞いていたんです。ただ、それ以外の要素ですね。チョコボだったり、モーグリだったり、移動の範囲でミニゲーム的なものをこんなにも詰め込む構成は大変で、チームの連携力の高さがあってこそだと思います。 ──そのいろいろなものが詰め込まれたオープンフィールドで、野村さんなりの遊び方ってあったりしますか? 野村氏: うーん……実を言うと自分自身は、「ちゃんとした遊び方」をしないタイプと言いますか、ひねくれた遊び方ばかりしちゃうんですよ(笑)。 たとえば、『ファイナルファンタジーXI』では用意されたクエストやレベルは無視して、自分で勝手にクエスト作って遊んだりしてましたし、正規ルートであまり遊ばないんです。ストーリーそっちのけで「ロケーションのいい場所がどこかにないかな」と探し回ったりですね。元々、ゲームの方で本来の遊びとして用意されたこととは違うことを見つけ出して、それで遊んじゃうタイプなんです。 ──それこそ、フィールドを「散歩」するような遊び方でしょうか。 野村氏: そうですね。「あ、このロケーションいいな~」という感じに、自分しか見つけられないものを探したくなるタイプなんです。「おそらくみんなはここをやるだろう」というところを見つけて、それとは別の違う場所を探すんですね。 ──『FFVIIリバース』のフィールドはそのように、自分なりに世界を探索するような遊び方も受け入れられるものに仕上がっているんですね。 野村氏: そうです、そうです。本当にプレイヤーそれぞれの楽しみ方が見つけられるぐらい、懐の広いマップになっています。 遊び方に関しては、それこそ自分はオリジナル版の初プレイは「マテリア」を一切使わずにクリアするみたいなことをやっていたんですよ。その時からなんですけど、違うことをやりたがるんですね。 ──えっ、マテリアなしでクリア!? かなりハードコアな遊び方な気がしますが……(笑)。 野村氏: そうかもしれません(笑)。ラストバトルは周囲にいた同僚たちに見守られながら盛り上がっていましたよ。 実は『ファイナルファンタジーVIII』の時にも「G.F.(ガーディアンフォース)」【※】無しで遊んで、クリアしようと挑戦したことがあったんですよ。なんですけど、途中で「さすがにこれは無理!」となってしまいまして、諦めちゃいました(笑)。 ──もしかしてそれ、今回の『FFVIIリバース』や前作でもできたりするんでしょうか? 野村さんはすでにやられてクリアしていたり……? 野村氏: いやいやいや!さすがにリメイク版の方では試していないです。いまはもう、あの当時の気力がそこまでないと言いますか、どちらかというとボーっとするタイプになっちゃいまして……なるべくバトルを避けると言うか。いまは「フォトモード」で風景を撮影するとか、そういう遊び方のほうが好きになっています(笑)。 ──野村さんのプレイヤーとしての貴重な一面をお聞きできたと思います(笑)。 ■キャラクターの存在感を高めないと、世界観の説得力が出ない ──キャラクターのことになるのですが、前作のリメイク版にもオリジナル版には居なかった新しいキャラクターが数名登場していました。完成されている『FFVII』の世界に、そのような新しいキャラクターを登場させるにあたって、どのようなことを意識されたのでしょうか。 野村氏: 確かに新キャラクターは何人かいますが、『FFVIIリバース』の新キャラクターにはオリジナル版の時は名前がなく、ひとつの役割として登場していたキャラクターもいるんですね。今回ですと、宿屋の主人であるブロード、連絡船第八神羅丸のチトフ船長は、その役割に該当するキャラクターがオリジナル版当時、モブとして存在していたんです。 今回は世界がよりリアルに描かれることによって、キャラクターへのフォーカスが濃くなる訳ですから、メインのキャラクターたちの周りを固めるキャラクターたちもある程度、存在感やディティールを高めないと世界観の説得力が出ないんですね。その意味で、オリジナル版の時とは違ってネームドキャラクターとしてアレンジし、固有の設定を付けて人間としての奥行きが出るようにしています。 ──野村さんはオリジナル版の時に人間のキャラクターのほかにモンスターのデザインもされていたんですよね。野村さんがモンスターをデザインされる時って、どんなことを考えながらデザインされたのでしょうか。 野村氏: そうですねぇ……オリジナル版の時のモンスターは、”元があるものは元に忠実に”という方向性でデザインしていましたね。自分自身、オリジナル版ではけっこう『ファイナルファンタジー』シリーズ定番のモンスターをデザインしていたんです。 たとえば「ベヒーモス」ですね。ベヒーモスをデザインする時は、天野さん(天野喜孝氏)のデザインを元にしました。ただ、天野さんもベヒーモスを『ファイナルファンタジー』シリーズで何種類か描かれているんですね。なので、今までの天野さんが描かれたベヒーモスをミックスさせるような感じに落とし込んでデザインする、という風に当時は心がけていましたね。 定番以外の『FFVII』オリジナルとして、僕がデザインしたモンスターの中で意外と人気だったのは「神羅屋敷」の地下に出てくるモンスターの「イン・ヤン」がいますね。 ひとつの身体に2つの身体があって、それぞれが上半身として出ているというモンスターです。あのモンスターは当時、ユーザーの方々から「動きが気持ち悪い!」とか話題になっていましたね(笑)。 もちろん、イン・ヤンも今回のリメイクで登場しますので、オリジナル版からどんな風にアレンジされているのかを楽しみにしていただければと思います。 ■『FFVII』が語り継がれる特別な作品になった“あのこと”への思い ──そのこととも関係しそうなことと言いますか、ちょっと際どい話題ではあるのですが……今回の『FFVIIリバース』は「忘らるる都」までのストーリーが描かれると公式に発表されています。その場所でオリジナル版の時、何があったのかは……実を言うと、私のようなオリジナル版の経験がない人間もその結末だけは存じていまして。 オリジナル版から25年以上の時を経て、今もそれが語り継がれていることに関して、野村さんはどんな思いを抱いているのでしょうか。 野村氏: オリジナル版の時は僕があの辺の流れを決めたというのもありまして、当時は反響も大きく、結構厳しいご意見もいただいた部分ではあります。 ただ一方で、それだけプレイヤーの胸に刺さるものでもあったんだな、と思いますね。当時、僕はゲームにおけるあの種の表現が“記号的な手法”になっていたように感じていたんです。 だからそれに反抗したい気持ちがあったというか、ゲームであっても“痛み”を感じられるというか、胸に迫る生々しさみたいなものを描いてみたいという思いがあったんです。 ──実際、あのシーンは『FFVII』の特別さを象徴するもののひとつになっていると思います。直接リアルタイムにプレイしていなくても、不意に耳にしてしまうほどですので。 野村氏: 実は発売後、植松さん(植松伸夫氏)とお話ししてたときに「もしあの運命がなかったら、『FFVII』はここまで語り継がれていないんじゃないか?」と言われたことがありまして。 やはり、それが『FFVII』というタイトルが特別であると言われる、大きな理由のひとつになったのかなと思いますね。 ──今回の『FFVIIリバース』、そして前作の『FFVIIリメイク』もオリジナル版を遊ばれた方々が思い描いたであろう夢や進化が現実になった作品になっていると思うのですが、そのようなオリジナル版を遊ばれた方々に向けて、今回の『FFVIIリバース』と、これからのリメイクシリーズで注目いただきたいところはございますか。 野村氏: そうですね……できれば、「最後までお付き合いいただければ」と思っています。リメイク版をプレイされた方で、「自分が思っていたものとは違う」という風に思われた方もいらっしゃるとは思うのですが、できれば完結までご一緒いただければなと。 その上で、「やっぱり思っていたのとは違う!」と思われたらそれはもう仕方がないのですが(笑)、このリメイクシリーズの物語がどんな終着点へと向かうのか、見届けていただければと思います。 やはりオリジナル版を体験された方々には、それぞれ25年以上の『FFVII』への思い入れと言いますか、それぞれの『FFVII』が存在していると思うんです。そのことは、このリメイクプロジェクトの最初期の打ち合わせでも「ユーザーの方々が解釈されている『FFVII』とは?」と、議題になっていました。 『FFVII アドベントチルドレン』などの派生したスピンオフがある中での解釈違い、補強された部分などを踏まえ、「スピンオフ以上のものがここにある」と思って作り始めたのが最初の出発点であり、それらをどのようにまとめていくのかというのが今回の目的になっているんですね。なので完結作となる3作目まで、できれば見届けていただいた上で結論を出してもらいたいと思っています。 ──2作目が発売というタイミングで気が早すぎるかもしれませんが、完結にどう向かっていくのか、期待しております。今の話とも関わるのですが、逆にリメイク版で初めて『FFVII』を体験された方、また今作で『FFVII』を体験される方もいると思うのですが、そのような方々に注目いただきたい部分などはありますか。 野村氏: HDになってからの『FF』はどうしてもストーリーの体験が主軸で、「自由に世界を探索する」という要素がメインではなくなってきていたんですね。『FF』は他のRPGのように世界を探索する要素もあれば、ストーリーもあるという“全部入り”が本来の形なんです。 今回、新規で『FF』を遊ばれるという方は、その本来の『FF』らしさを体験いただけると言いますか、「『FF』って、本来こうなのよ」と知ることができるのかなと思っていまして。リアルなディティールで表現される、昔ながらの『FF』の“全部入り”な遊びを体験いただけると嬉しいですね。 『FF』シリーズはナンバリングごとにそれぞれ独自の良さがあり、アプローチの仕方も変えてきているのですが、『FFVII』は三部作という形でボリュームを分けることによって、その異なるアプローチを実現させています。ぜひ、今回の『FFVIIリバース』を入り口に様々な『FF』にも触れていただきたいですね。 『FFVII』のオリジナル版での「マテリア」未使用、『ファイナルファンタジーVIII』での「ガーディアンフォース」封じなど、「野村さんは縛りプレイが好きな御方だったのか……!」と、遊び方に関して伺ったところ、思いもしない話題が飛び出す形になった。 リメイク版『FFVII』においては、「マテリア」未使用によるクリアの挑戦はされていないようだが、今回の話を聞いて「やってみようか……?」と挑戦意欲が湧いたのであれば、今回の『ファイナルファンタジーVII リバース』込みで挑んでみるのも一興かもしれない。 そして、野村氏の口から改めて語られる『FFVII』が語り継がれる特別な作品になった“あのシーン”への思い。オリジナル版を体験された方も、今回始めて『FFVII』に触れるという方も、『FFVIIリバース』は『FFVII』の特別さを存分に味わえる作品になっているはずだ。
電ファミニコゲーマー:シェループ,実存
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