ミャンマー:仏教徒とイスラム教徒の対立
日本は大型の支援を提案してきたが…
シットウェ市内のダカウン寺院では、ロヒンギャの人々によって家を追われた仏教徒の12家族が身を寄せあって暮らしていた。ムスリムの群衆に家を焼き払われた一人であるユーウィンマウンはこう言い放った。 「奴らは火のついた自転車の車輪を窓から投げ込んできたんだ。以前は友達だったが、もう二度とそんな関係には戻らないよ…」 衝突によってできた仏教徒とロヒンギャの人々との間の亀裂はさらに広がり続けている。国民の大部分が仏教徒であるミャンマーでは、国内世論は圧倒的にラカイン族側についており、ムスリムであるロヒンギャの人々に同情する声は多くはない。影響力のある高僧でもあるウィラトゥー師による、ムスリムを敵とみなす過激的な「反イスラム」思想も全国的に広まってきた。こんな背景のもと、人権派でもあるアウンサンスーチー氏も、多数派民衆の支持を失うことを恐れ、ロヒンギャ問題にはあまり関わろうとしていないようだ。 昨年、日本はミャンマーに対する5000億円もの債券の半分以上を放棄することに合意。さらに今年5月には安倍首相が、日本の首相としては過去30年以上ぶりに同国を訪問し、大型の新規援助や投資を提案してきた。日本をはじめ世界から「アジア最後の経済フロンティア」として大きな期待がよせられているミャンマーだが、ロヒンギャ問題をはじめ、多くの少数民族をいかにしてまとめていくかは、新生ミャンマーの成功のための重要な課題であろう。 (写真/文・高橋邦典)