追悼・増山江威子さん 「ルパン三世」峰不二子役で男女問わず魅了した艶声
【Tokyo cinema cloud X by 八雲ふみね 第1186回】 シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信する「Tokyo cinema cloud X(トーキョー シネマ クラウド エックス)」。 【写真全8枚】艶やかでスタイリッシュな不二子ちゃんを演じた増山江威子さん ほか 2024年5月20日、声優の増山江威子さんが逝去されました。 テレビが各家庭に1台普及し、昭和のテレビ文化がますます華やかになってきた1970年代。日本のアニメ業界では多くのテレビアニメが製作され、増山さんは人気声優のひとりとして、個性的なキャラクターたちに命を吹き込んでこられました。 常に第一線で活躍した功績が認められ、近年は、「第十五回声優アワード」功労賞を受賞。また「第13回 東京アニメアワードフェスティバル 2017」ではアニメ功労部門の顕彰者に選出されるなど、日本のアニメ作品を語るにおいて欠かせない存在でいらっしゃいます。 そこで今回は、声優・増山江威子さんをクローズアップ。当たり役・峰不二子を演じた「ルパン三世」シリーズを中心に、昭和アニメの魅力に迫ります。
みんなの憧れ!エレガントな峰不二子像を“声”で作り上げる
上品で艶のある声。柔らかくて甘い響き。昭和のアニメ業界を“声”で支えたパイオニア、増山江威子さん。増山さんの代名詞とも言えるキャラクターと言えば、そう、「ルパン三世」シリーズの峰不二子です。 日本のアニメ史上に燦然と輝く金字塔「ルパン三世」。1971年の放送開始から50年以上経った今でも色褪せることなく、幅広い層から支持されている国民的人気アニメシリーズです。 増山江威子さんは、TV第2シリーズにあたる「ルパン三世 PART2」(1977年)から、峰不二子の声を担当。2011年まで30年以上にわたって、日本のアニメ史を代表するセクシーアイコンを演じました。
天才的頭脳と抜群のプロポーション。自分の欲望には忠実で、狙った獲物は決して逃さない。お金や宝石を手に入れるためには、ルパン一味を裏切ることも。 そんな不二子ちゃんを時にキュートに、時にセクシーに表現し、ルパンのみならず世の男性たちを翻弄してきた増山江威子さん。あの「ルパ~ン」という、ちょっぴり甘えるような艶っぽい声。今も耳に残っているという人も多いのではないでしょうか。 そしてセクシーキャラでありながら、女性からも圧倒的な人気を誇っているのも峰不二子というキャラクターの特徴。不二子からは自立した女性のカッコよさが垣間見え、この令和の時代においても男女を問わず“憧れの対象”として崇められているのは、増山さんの凜とした声の演技によるところも大きいことでしょう。 改めて増山江威子さんの出演作を振り返ってみると、今もなお多くのファンに愛され続けている名作ばかり。 可愛くてセクシーな「キューティーハニー」の如月ハニー。気が強くてお転婆な「パーマン」のパー子。個人的には「天才バカボン」のママや「一休さん」の母上様といった、優しくて上品なキャラクターも大好きでした。 また、後に知って驚いたのが「オバケのQ太郎」のU子さんの声が増山さんだったということ。ハニーや不二子ちゃんとはまるで違う印象の役どころをユーモラスに、でもチャーミングに演じてらして、増山さんの表現力の奥深さに感嘆したことを覚えています。 テレビっ子で、リアルタイムで放送されているアニメやドラマでは飽き足らず、再放送されているものまで隈なくチェックしていた幼少時代。私が当時好きだったアニメは、不思議と増山江威子さんが出演されているものが多く、それは増山さんの声の魅力に自然と引き込まれていたのかもしれません。