「松谷武判」(東京オペラシティ アートギャラリー)開幕レポート。過去最大規模の回顧展に見る創造の全貌
1960年代に「具体美術協会」(具体)の第2世代として名を馳せた現代美術家・松谷武判(1937~)。その過去最大規模の回顧展が東京オペラシティ アートギャラリーで始まった。会期は12月17日まで。 松谷は1937年大阪生まれ。14歳で結核にかかり、22歳までの8年間を闘病生活に費やした。この期間に日本画を学び、63年には具体美術協会に加入。松谷は当時の新素材であるビニール系接着剤を用いてレリーフ状の作品を制作し、注目を集めた。その後66年に渡仏し、パリを拠点に版画制作に取り組み始め、ボンドと鉛筆の黒鉛を組み合わせた独自の作品スタイルを確立。さらに、インスタレーションやパフォーマンスの分野でも独自の表現を展開し、87歳を迎えたいまもなお旺盛な創作活動を続けている。 2017年に第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展のメイン企画「Viva Arte Viva」に参加。また19年にはパリのポンピドゥー・センターで回顧展を開催。現在は世界的なメガギャラリーである「HAUSER & WIRTH(ハウザー&ワース)」が松谷を取り扱っており、国際的な再評価の機運が高まっている。 本展は、松谷の半世紀以上にわたる制作活動の全貌を紹介する国内初の包括的な展覧会であり、各時期の代表作を含む総数200点以上の作品が展示。これまで発表されていなかった希少な作品や未発表のスケッチブックから最新作まで、松谷の創作活動の軌跡をたどるものとなっている。
文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)