「土地の力」写真や絵画で表現 三重・多気町五佐奈のサナ・ヴィレッジ
32人が作品、イベントも開催
三重県多気郡多気町五佐奈のギャラリー「sana village(サナ・ヴィレッジ)」で現在、企画展「風景ノ地層ヲ巡ル 多気・伊勢・三重」が開催されている。ギャラリーを主宰する写真家の中里和人さん(68)をはじめ、松阪市や同町など県内外から32人が参加し、それぞれの感覚を駆使して表現した〝多気・伊勢・三重〟が持つ土地の力を、写真や絵画、インスタレーションなどの作品を通じて体感する。12月14日まで。 同ギャラリーは中里さんが築70年の生家を改装し、展覧会、ワークショップ、イベントなどを通じ、地域に開かれたスペースとしてオープン。これまで建築家の石山修武との二人展「原視紀行」と、宮沢賢治の没後90周年を記念し画家で絵本作家の中野真典さんとの「宮沢賢治 二つの世界」の企画展や関連イベントなどを開いている。 3回目となる今回は、建築や美術、料理、華道や写真、薬草研究など多岐にわたる分野から総勢32人が参加。ギャラリーを巡りながら「デザイン×アート×ライフ」の循環を体感してもらう内容となっている。 築70年の古民家と土間、築100年超の二つの納屋を使った迷路のような空間の会場には、五佐奈の町並みと目の前に広がる里山の風景をスキャニングし記録した長さ3.5メートルの「写真絵巻」や、華道家の上野雄次さん(東京都)による、納屋にあった農機具やタイヤ、中里さん所有のミカン畑や竹林から集めた素材で、今回のコンセプトでもあるさまざまなエッセンスを吸い上げる巨木をイメージしたインスタレーション作品などが並ぶ。 築100年の納屋では、私立一志学園高校2年の森上綺羅さん(辻原町)が、薬草などをアルコールに漬けて色素や成分を抽出したチンキや、ウツギなどの薬草を乾燥させ細かくしたものを展示。「日常の中で生えている草でも知識があれば役立てられることを知ってもらえたら」と話す。 納屋2階では、建築家でイラストレーターの遠藤清さん(埼玉県)はイラストの他に、熊野市の花の窟(いわや)神社の世界感にヒントを得て表現した空間「風の窟」を出現させた。「自然との関わりが常に身近にある三重の細道をたどって広がっていく思いが風に乗って海や空に広がっているさまを表現しました」と話す。また、かつて多気町で採掘された辰砂(しんしゃ)の赤をオマージュした瞑想(めいそう)空間もある。 中里さんは「作品を通じてその土地に既にあるモノの新しい顔に触れてもらい、この土地や三重の力や豊かさを体感しに来てもらえたら」と話す。 会期中はナイトウオークやトーク、花生け、音楽ライブ、茶会などのイベントやワークショップ(いずれも有料)も開く。 開館は金、土、日曜の午前11時~午後5時。入館料500円(五佐奈地区の住人と高校生以下無料)。