弱者男性を生み出す一因は、「新卒一括採用」という日本独自の仕組みにあった。一度失敗したら復活できない残酷な現実
独身男性が「介護する息子」になる
これまで長らく介護は「女性の仕事」とされてきたが、非婚化する日本においては、必ずしもそうとはいえなくなってきた。 総務省統計局がまとめた「令和3年社会生活基本調査」によれば、15歳以上で普段家族を介護している人(介護者)は653万4000人おり、そのうち男性は256万5000人、比率でいえば約4割が男性になる。 若年層の介護者は少ないものの、50代以降になると、50代男性人口の約10%が家族の介護を担っている計算になる。 比率でいえば約6割が女性であるものの、「一人で介護」をしている介護者の場合、介護前と同じ仕事を続けられた割合は男女の差もなく低いという。そして、日本で要介護になる男性の約半分が、未婚または離別・死別をしており、パートナーに介護役割の分担を期待できないのである。 また、「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会(第9回)」の資料によれば、男性は女性に比べ、職場のなかに相談できそうな人がいないとアンケートで回答している人が多い。 こうした状況もあり、男性が誰にも相談できないまま親の介護にあたることも少なくない。 実際のアンケートでも、「息子」が親の介護をしている割合が「息子の妻」よりも高くなった。2019年のデータでは、同居の主たる介護者の20.4%が娘であり、17.8%が息子と、その割合に大きな差は見られない。 親やきょうだいの介護をしているために、昼は仕事、夜は介護と昼夜かかわらず対応し続けて体調不良を起こしてしまい、仕事の効率が落ちて会社からの評価が下がってしまう。このように、出勤しているものの健康問題などで生産性が低下している状態をプレゼンティーズム(presenteeism:疾病出勤)という。 あるデータによれば、重大なミスや事故を起こしそうになった「ヒヤリ・ハット」の経験割合を見ると、男女ともに介護疲労がある場合はヒヤリ・ハットを「たびたび」もしくは「たまに」経験する割合が上がるとの結果が出ている。 実は男性のほうがその傾向が高い。 つまり、男性は女性よりも介護で体調を崩している人が多いといえる。背景には、主たる介護者である男性が主に家計を担っていることから、女性よりも介護によって仕事を辞めにくいこともあるだろう。特に、先述したように出勤しているものの体調を崩している人の場合、会社や周りの人がその兆候に気づきにくい危険性もはらんでいるから注意が必要だ。 なかでも、父母双方が要介護になってしまった場合、介護者1名に対し要介護者が2名になり、介護前と同じ仕事を続けていくことが難しくなる。介護をきっかけに離職せざるを得なくなると、そのまま貧困のサイクルへと足を踏み入れることになりやすいのである。 文/トイアンナ
---------- トイアンナ(といあんな) 慶應義塾大学を卒業後、P&G ジャパンとLVMHグループにてマーケティングを担当。同時期にブログが最大月50万PVを記録し、2015年に独立。主にキャリアや恋愛について執筆。書籍『就職活動が面白いほどうまくいく 確実内定』(KADOKAWA)、『モテたいわけではないのだが ガツガツしない男子のための恋愛入門』(イースト・プレス)、『ハピネスエンディング株式会社』(小学館)など。これまで5000人以上の悩み相談を聞き、弱者男性に関しても記事を寄稿。 ----------
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