弱者男性を生み出す一因は、「新卒一括採用」という日本独自の仕組みにあった。一度失敗したら復活できない残酷な現実
新卒で年収が低い業界へ進んだ男性の苦悩
実際に、新卒で収入が低い業界へ進んでしまった男性から、話を聞いた。 「アニメ業界に憧れていて、でも絵は描けなかったんで、アニメショップの正社員になりました。中小企業としては平均的な年収かもしれませんが、30歳で年収300万円台は、東京で暮らすにはきつい。昇給の基準もわからなくて、面談は一応あるんですけれども、形ばかりなんですよね。上司が気に入った人の年収を上げているのか……。 そりが合わない人は、いつまでたっても低いままです。残業代も月に2万円までしか出ない決まりになっていて、実際の残業は40時間くらいあるんですけれども、反映されてないですね。家に帰ってからも、持ち帰りで店頭のポップ作ってるときとか、ありますよ。年収に年功序列とかもなくて、ずっと同じままです。だったらと思って、転職活動を始めたんです。 ただ、今まで接客しか経験したことがないんで、転職先も似たような業務で、似たような給与のところばかりエージェントさんに挙げられてしまって。実際、他の業界に書類を出してはみたんですけれども、全部落ちちゃって。20社くらい出してから、もういいかな……となって、今も同じ仕事をしています。というか、同じ仕事をするしかないというか。人手不足だから、いつまでたっても若手と同じ仕事を続けるしかないのも、仕方ないと思って諦めていますね。 新卒のとき、就活ではやりたいことを考えて、応募先を選ぶ人が大半だと思うんです。でも、こんなに業界によって給与が違うって思わなかったですね。初任給はみんな同じような金額なのに、同級生で金融業界に行ったやつとか、やっぱり500万、600万稼いでるんですよ。そういうやつは20代で結婚してるし、子どももいる。年収って、学生のころはピンとこなかったけど、今思うと結構大事ですよ。 アニメも、前は3話までなら全部見るくらいの元気があったんですけれども、飽きてきちゃって。仕事から帰ってきてまで、アニメ見るのも疲れるなと。オタクをやるのにも元気がいるんですよね。これからもっと見なくなるのかもしれないですね。じゃあ、オタクやめて結婚したいとか思っても、今の年収では誰からも選んでもらえないし、実際、子どもを持つ余裕ってないですよね。だから、いろいろ諦めてます。多分この先も、同じ生活をするしかないんだろうなって……」 この話をしてくれた方は、自ら望んだ結果として年収が低い業界へ行ってしまった。 しかし、なかには、就職氷河期が理由で本人の希望にかかわらず「そこにしか就職できなかった」人もいる。そもそものスタートが本人の望んだものではなく、転職もできずに悩める人もいるのが現状である。