「人民寺院」事件の無惨な現場、約束の地は一瞬で地獄に変わった、元米兵の新たな証言
遺体の数
ジョーンズタウンの住人のほとんどは米国人だったため、地元当局は情報を得るため米軍に助けを求めた。ネタビル氏とそのチームは、コミューンの近くで調査に訪れたレオ・ライアン米下院議員が銃で撃たれて死亡したということ以外、現場で何が起こったのか知らなかった。 ネタビル氏もクラウス氏も、現場に近づくにつれて間違えようのない死の臭いが漂ってきたことを覚えている。上空を飛んでいたヘリコプターのなかにまで、臭いは入り込んできた。 「人間の死臭は、この世で最もひどい臭いです。死んだ牛の10倍は臭います」。少しでも楽になろうと、ネタビル氏は枕カバーを切ってマスクを作り、それにオールドスパイス(米国の制汗剤)を塗り付けて鼻を覆った。 遺体には既に虫がたかり、暑さと湿気のせいで腐敗が始まっていた。事件のあと最初に現場に入ったジャーナリストの一人だったクラウス氏は、「遺体は膨張して、身元を判別するのが困難でした」と話す。 現場をさらに痛ましいものにしていたのは、子どもたちの遺体だった。犠牲者には、赤ちゃんから10代の子どもまで含まれていた。「自分の子どもたちを抱きながら死んでいった人もいました」と、ネタビル氏は言う。 動物ですら、殺戮を逃れることはできなかった。ネタビル氏は、犬の遺体を目にしたことも覚えている。さらに、人民寺院がカリフォルニア州から連れてきたチンパンジーのミスター・マグズまで、銃で撃ち殺されていた。「本当に、信じられませんでした。なぜ動物まで殺す必要があったんでしょう」 ネタビル氏のチームは、現場を複数のセクションに分けて、遺体を一つひとつ数えていった。当初の計算では、遺体は450人分あった。本部に無線で伝えると、「向こうも信じてくれませんでした。3回も数字を復唱させられました」という。 ところが、その数字は実際の数を大幅に下回っていた。「まさか、遺体の下にさらに遺体があったとは思いませんでした。人々は互いに折り重なって死んでいたのです」 数えても数えても、遺体は出てきた。最終的な死者数は918人に達した。そのうち909人がジョーンズタウンで亡くなっていた。