サカリ・オラモが東響定期に初登場。「鳥」でつながる大自然の調べ
4月、フィンランドからふたりのアーティストが東京交響楽団の定期演奏会に登場する。 ひとりは、指揮者のサカリ・オラモ。優秀な指揮者を輩出しているフィンランドを代表するマエストロのひとりだ。ラトルの後継者としてバーミンガム市響の音楽監督を務め、フィンランド放送交響楽団、ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を歴任、現在はBBC交響楽団の首席指揮者だ。東響とは初共演となる。 【画像】その他の写真 もうひとりは、フィンランドでもっとも重要なソプラノ歌手アヌ・コムシ。超絶技巧と力強い声の持ち主で、北欧の現代曲も積極的に取り上げてきた。 今回のプログラムは、北欧のレアなレパートリーが3曲。最後はドヴォルザークの交響曲第8番という構成だ。 演奏会は、ラウタヴァーラの「カントゥス・アルクティクス」で始まる。サブ・タイトルは、鳥とオーケストラのための協奏曲。作曲家が録音した鳥の鳴き声をソリストにした協奏曲だ。鳥の声とオーケストラが響きを交わし合い、さらに両者が一体となって一斉に飛び立つ様子は鳥肌が立つほどの興奮をもたらすだろう。 次に、昨年亡くなったサーリアホの「サーリコスキ歌曲集」が演奏される。フィンランドの詩人サーリコスキの詩による歌曲で、自然と人間との関わりも色濃く投影される。そして、この曲も、ソプラノが鳥の声を模したトリルで始まる。作曲家が目指したのは、声をオーケストラのなかに引き入れること。コムシの表現力があってこその音楽だ。 シベリウスの「ルオンノタル」は、この作曲家の交響詩のなかでは、演奏される機会に恵まれない作品だろう。というのも、ソプラノ独唱とオーケストラのための作品で、その歌唱にはハイレベルのテクニックが要求されるから。コムシの幅広い声域がこの曲でも生きてくる。その歌詞はフィンランドの英雄叙事詩「カレワラ」の冒頭による。創世記的な内容をもち、鳥(カモメ)が重要な役割を果たす。つまり、これまでの3曲からは、鳥を介して、自然と人間との関わりという共通のテーマも浮かび上がってくる。じつに練り上げられたプログラムだ。 そして、ドヴォルザークの交響曲第8番。明晰に縁取られた響きのなかに、ユニークな感性をきらめかせるオラモの個性がより浮き彫りになる。強弱のコントラストも鮮やかに、キレキレのドヴォルザークをホール全体に響かせてくれるはずだ。 鈴木淳史(音楽評論家) 東京交響楽団 第719回 定期演奏会 川崎定期演奏会 第95回 4月20日(土) 18:00開演 サントリーホール 4月21日(日) 14:00開演 ミューザ川崎シンフォニーホール