“怖いほう”の小日向文世の本領発揮 夏ドラマ『降り積もれ孤独な死よ』 誰もが知るあの名作の“狂気”再来!
圧倒的な不気味オーラ
ビジュアルがそうなっているから、もありますが、湖のほとりにたたずんでいるときや、子ども時代の花音(有香)に万引きを教えているときも、表情がほとんど変わらない、抑揚のない話し方で何を考えているのかまったくわからない、体温が低そうな感じがさすがの演技。ご本人も公式HPで、「どういう人物像なのかが非常に謎めいています」とコメントしています。 そもそも灰川は、子どもたちを強制的に連れ去ったのではなく、親から虐待を受けていた子どもを連れてきていた、つまり救済しようとしていたようなのですが、その目的は今のところ不明。 “謎の男”というキャラクターは、ミステリーや刑事ものではよく出てくると思いますが、その“謎っぷり”をここまで見事に体現できることって、なかなか少ないと思います。 最近は、ドラマの公式SNSで、撮影中のオフショットが公開されるのが当たり前となり、キャストたちのNGシーンや、ふざけたりリラックスしている写真や動画を見られることが増えました。 ですがこのドラマの公式SNSでは、小日向さんのそういったオフショットは今のところ皆無。あるのはドラマ内の場面写真だけです。 灰川のミステリアスさを終盤まで維持するためには、それは正解だと思います。なぜなら、小日向さんの人懐っこい笑顔は、灰川とはあまりにも真逆だからです。 小日向文世さんは舞台、ドラマ、映画ですでに膨大な数の作品に出演していて、演じたキャラクターの幅もあまりにも広いのですが、番組でご本人が話すところなどを見たことがある人は、明るい、可愛らしいという印象を持っている人もいると思います。 ですが怖い役、嫌な役のときの彼の放つ不気味オーラは他を圧倒するものがあります。
うっすら狂気をはらんでいる役の小日向さんは格別
その昔筆者が小日向文世という役者をハッキリ認識したのは、最近配信されて人気のすごさを改めて知らしめていた『古畑任三郎』(フジテレビ系)のサードシーズン、田中美佐子が犯人の回。 潔癖症で几帳面、さらに妻に対するモラハラとも独占欲ともいえる束縛で、家に縛りつけようとする粘着夫・小田嶋佐吉でした。 当時まだ小日向さんの顔をよく知らなかったおかげもあり、この束縛する夫が本当にいやらしく憎たらしく見え、殺されて当然とすら感じていました(あくまでドラマ内で、の話)。 そのくらいこの役の小日向さんは、そういう人に見えた。 優しい性格のキャラクターや、可愛らしさを感じさせるキャラクターも多くあるのですが(忘れられない愛すべきキャラクターは『木更津キャッツアイ』(TBS系)の公助! )、映画『20世紀少年』シリーズで演じたヤマネ、『真田丸』(NHK)で演じていた豊臣秀吉など、うっすら狂気をはらんでいる役の小日向さんは格別だと思うのです。舞台『国民の映画』でナチス党員のゲッベルスを演じたときもすごかった。 そして今回の灰川十三役は、そういう狂気ともまた少し違う怖さを感じます。 物語は中盤から終盤に向けて二転三転中で、まだ真相はまったくわからない状態。灰川十三と子どもたちの間に何があったのか。さらに小日向さんの凄みが見られることを期待しています。 『降り積もれ孤独な死よ』 毎週日曜22時30分放送(読売テレビ・日本テレビ系) Instagram:@furitsumore_ytv
斎藤真知子