レクサス次世代EVの発売延期で気になる「アリーンOS」の進捗状況。EV市場の沈滞だけが理由か?
アリーンOSの凄さはその拡張性と柔軟性にあるが開発のハードルは高い
気になるは自動車メーカーとして未知の領域、すなわちソフトウェアプラットフォームであり車載OSであるアリーンOSの進捗状況だ。車載OSの開発には、莫大な資金とマンパワーが必要なだけでなく、根本的にカルチャーが異なる世界の統合作業が求められる。 自前の車載OS開発は世界中のメジャープレイヤーが取り組んでいるが、先行していたはずのフォルクスワーゲンは苦戦しており、度重なる計画変更を余儀なくされている。アリーンOSの開発も子会社の「ウーブン・バイ・トヨタ(WOVEN by TOYOTA」が主導しているが、成熟産業たる自動車メーカーが新たな専門技術を統合することの難しさに悪戦苦闘しているのではないかと気を揉む。 アリーンOSが目指しているのは、たとえば、スマホでお馴染みのAndroidのような仕組みだ。AndroidはオープンソースのLinuxをベースに開発されているが、サードパーティが参入しやすいようにアプリの開発キットも公開している。アリーンOSにおいても、性能と拡張性などの基本的なオペレーション機能はトヨタが担保したうえで、ほかの自動車メーカーが手を加えたりサードパーティが新たなアプリの開発ができるように開発キットを公開するという。つまり、アリーンOSは自社SDVの範疇に収まらない、拡張性と柔軟性を併せ持っている。 ちなみにテスラは完全な垂直統合であり、自社のプロダクト以外への展開はない。ひとくちにSDVと言っても、その方向性や将来性は大きく異なる。ここにトヨタの勝機があるはずだ。 アリーンOSの発表/開発キットの公開は2025年に設定されており、いまのところ計画に変更はない模様だ。とはいえ、本格的に展開するにはサードパーティの開発時間も考慮して遅くとも2025年末までには公開されなければならないだろう。 2025年春にはメルセデス・ベンツが、同年後半にはBMWが自前の車載OSを搭載したSDVを投入する。今回の生産開始の延期理由がアリーンOSの開発に起因するものではなく、単なる「EV市場の沈滞」であればよいのだが。