「財産の分け方」で〈税金のかかり方〉は変わるが…税対策よりも先に“確認すべきこと”【司法書士が解説】
相続財産の分け方で“税金のかかり方”が変わる
相続税対策の特集記事や、それらを取り扱った本がたくさん出ています。みなさん相続税のことを気にされていますが、その前に本当に税対策が必要かどうかを知ることが大切です。 相続財産を洗い出し、把握した情報をもとに、税の無料相談や税理士相談などを利用してかかる税金を試算します。 相続税がかかる場合の注意点は、財産の分け方によって税金のかかり方が変わること。具体的な財産の分配案をもとに配偶者控除や小規模宅地の特例などが適用された、現実的な数字を知る必要があります。 それがわかってから、はじめて対策を検討すればよいのではないでしょうか。 一般的な対策としては、暦年課税の枠(年間110万円)や、相続時精算課税制度を利用して、子だけでなく孫の世代への贈与などを活用することが考えられます。また、生命保険の利用なども考えられます。 有効な方法は、個別のケースにより異なり、費用対効果の問題もあります。具体的な対策方法については個別の事情をしっかり伝えて、税理士やファイナンシャルプランナーといった専門家に、アドバイスを得るのが良いでしょう。 Q.うちは、相続税がかかりますか? 2021年の財務省のデータによると、相続税が課税された件数は、その年の死者数の9.3%です。つまり、およそ10人にひとりが相続税の対象になっているわけです。そのうち約半分は、課税価格が5,000万~1億円の部分に集中しており、この層の平均納税額は、259万円です。 都市部であれば土地や建物に預貯金を加えると、この層に入ってくるのではないでしょうか。 いずれにしても、財産を洗い出し、相続税がかかるだけの財産があるのかを把握しましょう。
遺言書の最大のメリットは「法的拘束力があること」
「遺言書は作ったほうがよいですか?」と聞かれることがあります。経験上、私なら「迷うくらいなら作りましょう」と答えます。 相続が発生したのち、相続人の間で「生前、父はこの財産は○○に相続させたいと話していた」「この財産はおまえのものだと言われた」などの言った言わない論争がくり広げられるからです。口約束は証拠にならず、法的拘束力もありません。 「自分が考えたとおりに相続させたい」「相続で争いが起こる要素がある」「もめごとを予防したい」のであれば、遺言書を作るべきでしょう。 さて、通常の遺言には、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。 自筆証書遺言は、遺言書の内容をすべて自筆するなど要件が決められています。ただし現在は、本文以外の財産目録などはパソコンで作ったものを使用できるようになりました。 自筆証書遺言は、自身で保管する方法と法務局で保管してもらう方法のふたつがあります。後者は手数料がかかりますが、紛失の心配がなく、家庭裁判所による検認手続きが不要となります。 公正証書遺言は、公証役場において作成する遺言書です。手続きに公証人が関与するほか証人も必要で、手続きも厳格です。遺言としての証拠能力が高いといえます。 なお、どちらの遺言も作り直しできます。 Q.遺言書の内容を家族に知らせるべき? 遺言書の内容は、生前に家族に開示する義務はありません。つまり、ご自身で伝えない限り、家族は内容を知ることができません。 私がこれまでに関わった公正証書遺言作成の場面では、家族がすでにその内容を知っていることもありました。内容について家族で話し合いがされており、その証拠を残す形だったのでしょう。しっかり話し合ったなら、公正証書遺言でより確実に残しておくこともできます。 太田 昌宏 司法書士・行政書士
太田 昌宏
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