名スカウトが選ぶ2019年ドラフト逸材9人
片岡氏が大学、社会人投手の中でピカイチのA評価をしているのが明治大の森下暢仁だ。大分商時代から噂の右腕で、甲子園出場はできなかったが、U-18侍ジャパンに選ばれている。プロ志望届を出さず明治大へ進み1年で右肘を骨折したが、2年春から復帰、防御率も安定して最速は154キロをマークしている。 「上背があってボールに角度があり、しかも低めに集まる。こういう質のボールが低めに集まれば、プロでもそう簡単に打たれない。ボールに体重が乗っていて、スピードがある。しかも、カーブなど変化球も低めに集めることができるのが素晴らしい。体が大きいわりに柔らかく使えて腕の振りもフォームも安定している。大学、社会人を通してナンバーワン投手だろう。ローテー入りを計算できる」 大学生では、東北福祉大の大学選手権優勝に先発、抑えのフル回転で貢献した サイドハンドの津森宥紀、創価大の杉山晃基らもドラフト候補だが、「津森は体の使い方がサイドハンドのそれでもないし杉山もまだ安定感が足りない」と、片岡氏の評価は厳しいものだった。 社会人でリストアップしたのは、東海理化の20歳、立野和明と、同じくJR東日本の20歳、太田龍の両右腕だ。立野は中部第一高時代には甲子園出場はないが、昨秋の日本選手権の一回戦では室蘭シャークスを相手に150キロを記録。延長12回まで4安打1失点10奪三振の力投を見せた。都市対抗でも補強選手に選ばれている。 「立野はリズム感があり、球離れの瞬間にうまく力が入る。ストレートにも力があるし変化球と腕の振りが変わらない点もいい。即戦力として考えられる」 太田は、190センチの長身から繰り出す角度のあるボールが武器で最速は153キロ。れいめい高では、甲子園出場はないが、社会人2年目の昨夏都市対抗では、3試合で、計11回1/3を投げて無失点の内容で若獅子賞を受賞した。 「まだボールにばらつきはあるが、スケール感はある。社会人だが、伸びしろを期待できる投手」と片岡氏は上位候補に入れた。 一方、野手では高校生から東邦高の石川昂弥の名が挙がった。三塁手だが、投手としてマウンドにも上がる“二刀流”で、名門、東邦で1年から4番を打った。通算本塁打は35本を記録している。 「柔らかいね。二刀流をしているようだが、投手としては野手投げでプロでは厳しいだろう。ノーステップ打法からボールに当てるのがうまい。センスを感じる。強振するフルスイングではない。力を入れていないのに打球が飛ぶ。昭和の時代の好打者を思い起こさせるし、巨人の岡本級の素材じゃないかな。右の長打者は、どのチームも欲しい」 片岡氏は巨人の4番打者として覚醒した岡本和真クラスの右のスラッガー候補として絶賛した。 大学、社会人からは、国際武道大の左のスラッガー、勝俣翔貴だ。東海大菅生高時代は、投手&外野の“二刀流”で活躍していたが、国際武道大に進み三塁手にコンバート、その打棒を買われ大学の侍ジャパンに選ばれている。 「逆方向に強い打球を打てる。バッティングセンスがなければできない芸当。自分のスイングを試合の中で出せる実戦タイプだ。元投手だけあって肩も強い。プロでは中距離ヒッターになるのだろうが、即戦力の三塁手だ。ポジションが空いているチームは上位で指名するんじゃないか」 また片岡氏好みの野手が、パナソニックの片山勢三。105キロの巨漢の一塁手。九州共立大時代から「九州のおかわり君」と呼ばれ、明治神宮大会で、1試合2発を放って注目を集めた。魅力はパワー溢れる一発である。 「守れないからパ・リーグ向きかもしれないが、スカウトは、こういう選手を獲っておきたくなる。パワーはもちろんだが、単純なプルヒッターではなく、ボールにうまく回転をつけて飛ばす技術を持っている。西武の山川に重なるね」 ドラフトまでまだ10か月。 「秋を前に、それぞれの選手の評価がどう変わってくるか楽しみだな。まあ私の目なんて節穴だから」。片岡氏は、新春のドラフト予想をそう言ってまとめた。