『ビリオン×スクール』松田元太の表情のグラデーション 『クレヨンしんちゃん』パロディも
ドラマ『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)第3話のテーマはスクールカースト問題であるが、映画制作を描いたドラマにもなっている。今回スポットが当たる生徒は鈴木(柏木悠)と紺野(松田元太)。もともと映画部として制作に日々没頭していた2人だったが、紺野がカーストトップの城島(奥野壮)に誘われる形で退部届けを出し、クラスでも話すことはなくなっていった。 【写真】スクールカースト制度に驚く加賀美(山田涼介) AIプログラムのティーチ(安達祐実)が加賀美(山田涼介)に提案したスクールカーストをなくす方法、それが鈴木に映画を撮らせ、映画祭に出品するというもの。一方、停学をくらわせられた東堂(大原梓)たちは加賀美を失脚させる計画を立てていた。AIスーツを着た加賀美に襲いかかり、反撃してきたところをスマホで撮影して、そこだけを切り取りSNSに拡散させ、体罰問題でアウトにする。その犯行を命じられたのが、紺野だった。 紺野に関しては、第2話の時点で東堂たちと一緒にいることに迷っているような表情を見せていた。鈴木がクラスメイトたちと映画を撮影しているのを目撃することで、紺野の逡巡はより強く表れていく。 回想として映し出される、まだ黒髪だった頃の紺野と鈴木は、絵に描いたような青春を過ごしていた。紺野が役者で、鈴木がそれを撮影する監督。初々しさ溢れる鈴木の脚本は、やる気漲る紺野を教室でもセリフ練習に向かわせていたが、城島に声をかけられることで2人の青春は終わりを迎えた。 鈴木も映画部から紺野が去ったことで空虚な思いを抱いていた。梅野(上坂樹里)をヒロインに迎えた西谷(水沢林太郎)らとの映画は、そもそも紺野に演じてほしくて書いた作品。自分に嘘をついて映画を作るのがつらくなっていった鈴木は自らセットを破壊し、撮影データを消去することで映画を破壊した。 鈴木の本心を知り胸を打たれた紺野は、「俺とお前なら、頂点目指せんだぜ? 頂点は頂点だろ! 2直線で交わる点じゃなくて、頂、トップ、最高位! そっちの頂点ね」と一見意味ありげだが、実はそれほど深いことを言ってもいない、偏差値が低い彼らしい絶妙なニュアンスのセリフを言い放っている。 頭をかきむしりながら、今まで溜め込んでいた鈴木への本音が漏れ出す紺野。徐々に変化していく松田元太の表情のグラデーションが、鈴木と無邪気に過ごしていた青春の日々へと戻っていくようで、自然と心を掴まれた。 また、映画を題材にした回ということもあってか、エピソードを繋ぐ縦の線として存在感を放っていたのが映画『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』である。映画シリーズの中で最高傑作と呼ばれる、ファンからも評価の高い本作。休憩中に鈴木が加賀美に勧める映画が『オトナ帝国』であり、芹沢(木南晴夏)とティーチが「じゃ、そういうことで~」とクレヨンしんちゃんのモノマネをしたり、CM前のテロップが「このあと、カガミ帝国の逆襲だゾ」「後半も、みれば~?」と『クレヨンしんちゃん』パロディだったりとやりたい放題。だが、『オトナ帝国』を観た加賀美がしっかり鈴木と紺野への説教=授業に『オトナ帝国』のエピソードを混ぜこむところは見事と言える。言うまでもなく、『クレヨンしんちゃん』はテレビ朝日で放送中のアニメなのだが。
渡辺彰浩