少年力士、1人で「のこった」 珠洲・上戸小6の徳力さん
●16日に大会「絶対優勝」 ●再開の飯田相撲教室で稽古 珠洲市の飯田相撲教室に通う徳力海来(みらい)さん(11)=同市上戸小6年=が、16日に地元で開かれる大会に向け、たった1人で稽古に励んでいる。同じ教室に通う仲間は市外への避難や家庭の事情で練習に参加できなくなり、徳力さんとコーチだけが残った。地震の影響で練習用の土俵が使えなくなるなど環境は厳しいが、「絶対に優勝する」と徳力さん。少年力士は得意の前へ出る相撲で頂点を狙う。 「バチン」。広いグラウンドの一角に、肉がぶつかり合う音が響いた。12日、珠洲市飯田小。徳力さんは青木英樹コーチ(51)の掛け声に合わせ、その胸に勢いよく飛び込んだ。 この日、飯田相撲教室は元日の地震後初めて立ち合い稽古を行った。同校の屋外土俵は地震で屋根が破損して使用できず、練習場所は土俵の隣。ぶつかり稽古の合間も常にすり足を繰り返し、足腰の鍛錬を怠らない。 教室は51年前に創設され、多くの少年力士を育てた。徹底して四股を踏ませ、地道に下半身を鍛えるスタイルで、「立ち合い一発ドン」(青木コーチ)の押し相撲が伝統だ。 元日の地震前、教室には8人が在籍していた。しかし、このうち2人は金沢に避難し、別の2人は中学進学を機に教室を離れた。さらに3人が家庭の事情で練習に通えなくなり、徳力さん1人だけとなった。 しかし、徳力さんはめげなかった。16日、珠洲市三崎中で開かれる同市少年相撲選手権大会・わんぱく相撲全国大会珠洲場所(北國新聞社後援)に向けて稽古を再開。5月19日には、金沢市に避難している1学年下の池端洸喜さんとともに高校相撲金沢大会を観戦し、士気を高めた。 大会当日は池端さんも駆け付ける。ただ、団体戦には出場できないため、徳力さんが狙うのは個人の頂点だ。全国大会の切符もかかっており、徳力さんは「絶対に優勝して、石川県の代表になる」と力強く語った。 ●伝統の校内相撲、今年も ●穴水小、会場移し22日 穴水町穴水小は22日、今年で151回目を数える創立記念校内相撲大会を穴水中体育館で開く。土俵がある穴水小運動場は仮設校舎の建設が進んでいるため、会場を移して伝統をつなぐ。全校児童137人の元気いっぱいの取組を通じ、被災者を勇気付ける。 穴水小は、元日の地震で校舎に大きな被害が出たため、穴水中を間借りして授業を行っている。学校行事が制限される中、できることは工夫して実施しようと、同校の体育館に土俵マットを敷いて大会を開催することにした。 昨年の150回大会には全校児童164人が参加。男子は学年別の個人トーナメント戦、女子は東西に別れての団体戦を行い、保護者や住民を沸かせた。吉村明美校長は「子どもたちの頑張りを見てほしい」と話した。