【渓流】一里(約4km)歩いて一尾しか釣れないと言われる夏ヤマメにチャレンジ!
〝一里(約4km)に一匹〟と言われる夏ヤマメ。つまりは約4km歩いてようやく一匹に出会える、というくらい夏の渓流釣りは辛い。そのうえ、古希を過ぎ老いた腰にヒビが入りかけ気力に食い込まれそうになる。それでもなんとか釣りたい、と老いの熾火に息を吹きかけ、フライロッド片手に目的の場所を目指すことにした。 【写真】陸生昆虫を模した風の毛むくじゃらフライ
まずは川辺川、五家荘夕マヅメ
五木へは二本杉、朝日(わさび)、笹越、子別峠(こべっとう)、大通(おおとおり)の峠越えがあるけれど、この日はようやく工事が終わった二本杉から下りることにした。遅い午後、かつていい思いをした瀬を観察してまわって、夕マヅメを狙う。次の日は未明に起きて朝マヅメ、という夏ヤマメフライの要諦を踏む。釣りの時だけ行動は充実して簡潔である。 さて初日の夕マヅメ、樅木の支流に行ってみた。釣り人の多い川だけれど、空が開いてフライには好ましい釣り場である。先週の大雨の名残か、薄く濁っている。763の竿でも糸が絡まないよう、キャストに気をつけながら攻め立てる、すると明るい瀬で小さい魚が追って来た。ここでは孔雀胴に茶色の羽をテンカラ風に巻いたのが良かったことを思い出したので使っている。だが、大粒の豆ヤマメ君が掛かっただけで終わった。 午後も遅くなったが日はなかなか沈もうとはしない、暑い。初日の長旅、早めに五木の温泉に浸かる。宿の酒に手伝わせて熟睡。
朝マヅメ、ハッチもライズもない瀬でメマトイを手掛かりにミッジで攻める
さて、次の日は朝マズメ狙いで4時起き、5時出発。帰りの道すがら、去年訪れたポイントでフライを抛る。その時は極豆、今年も極豆、ちょっと辛抱していくらか大きい魚を掛けていたのでそのおさらいである。 メマトイがしつこくて、でもこれを手掛かりにするしかなく、じゃあと薄明りでも目立つ白や桃色目印を付けた鶏の縞毛ミッジで決める。他の羽虫は見えない。ハッチがあって、それを待って魚が水面に踊らなければならないのに水面は裂けもせず弾けもせず穴も開かない、水しぶきが立たず影も走らない。しかし、魚がいない訳ではない。目の前の羽虫を手掛かりに辛抱して抛って工夫して掛けて、それで初めて、川は仮死状態だっただけだということを知らされる。 瀬ごとに追って来たけれど小さい。〝一里一匹〟の夏ヤマメ。小さいからといって不満は生じないはずだけれど…まあ、佳しとするか。午前の半ばだが糸をリールに巻きとり、竿をはずして渓を出る。森の下の影のような小道をたどると点々の木漏れ日がすでに暑い。ああ冷たいビールが飲みたい。