日本のEVシフトは2024年に入り低迷気味! 軽のサクラ&eKを除けば海外勢の健闘が目立つ
日本メーカーのEVが苦戦
まず初めに、2024年の主要自動車メーカー別のバッテリーEVの販売台数の変遷を見てみると、やはり日産の販売台数が圧倒的な存在感を見せています。 また、日産を除いた販売台数の変遷を見てみると、テスラが販売台数でリード。その次は軽EV2車種をラインアップする三菱、そしてトヨタとBYDが148台で並んでいる状況です。 なかでも注目したいのがテスラの存在です。6月は759台を達成しながら、第二四半期は合計1388台を実現。前年同四半期では1234台であったことから、テスラは前年同四半期比でプラス成長を実現しており、グローバル全体でマイナス成長であったことを踏まえれば、かなり健闘した四半期であるといえそうです。 ちなみに、テスラ独自の急速充電ネットワークであるスーパーチャージャーは、6月末現時点で累計119箇所、592基を建設済みです(実際に稼働中なのは117箇所)。 次に注目していきたいのがトヨタのEV販売動向です。トヨタは現在bZ4X、レクサスUX300e、RZという3種類のバッテリーEVを発売しているものの、6月は合計148台と低調です。まだ6月中の販売内訳は判明していないものの、5月は、bZ4Xが73台、UX300eが21台、RZは48台と、需要が低迷している様子が見て取れます。 とくに問題であると感じるのがbZ4Xの存在です。bZ4Xは2023年末から、KINTOを通じたカーリースとともに一般向けの売り切り販売を開始していることから、やはり日本国内では、いくらトヨタといえども、EVをラインアップすれば売れるというような甘い世界ではないという様子も見て取れるでしょう。 また、日産アリアの販売動向について、6月の販売内訳は現状不明ながら、直近の5月は147台と、2023年後半から販売台数が低迷している状況です。やはり販売再開後、EV性能をはじめとして、オプション装備内容をほぼ変更していないにもかかわらず、120万円もの大幅値上げを行ったことによって、需要が低迷している可能性が高いです。 そして、日産アリアのグローバル全体の需給動向も確認すると、この2年ほどをかけて、とくに欧米で徐々に販売台数を伸ばしている様子が見て取れまず。他方で、ピンクの棒グラフで示されているグローバル全体の合計販売台数は、じつはこの1年間横ばいです。このことから何がいえるのかといえば、これまでアリアの販売台数の低さは、あくまでも生産体制に問題があるとされていたものの、この需要動向を見ると、生産体制には大きな問題はなく、やはりあくまでも、世界全体の需要に問題があるといえるわけです。 最後に注目するべきはBYDの存在です。BYDは6月に148台を販売することに成功。しかも新発売のシールの納車は7月末からであり、販売台数には含まれていないという点も重要です。そのうえ4月以降、BYDのEVに対する補助金は一律で35万円と大幅減額されており、この点を考慮に入れると、かなりの健闘を見せているように見えます。直近で高感度ランキング輸入車部門トップ、自動車部門でもNo.2である、長澤まさみさんを起用したテレビCMがいい影響を与えているのかもしれません。 すでにトヨタのEV販売台数とまったく同数であることから、果たして下半期、シールの追加とテレビCMの浸透によって、どれほど販売台数を増やせるのかにも注目です。 いずれにしても、この日本国内のEVシフト動向については、前年同月と比較してもマイナス成長であり、EVシフト後退という状況が見て取れます。なかでも問題なのが、日本メーカーの、とくにアリアやbZ4Xなどのような普通車セグメントの販売動向が芳しくないという点です。残念ながら2024年シーズンは、この普通車セグメントにおいて、日本メーカーは新型EVを投入する予定がないことから、日本のEVシフトが今後も後退していく可能性が高いと推測可能です。 それでも、軽自動車セグメント、および輸入メーカーのEVの存在によって、そのEVシフト後退をどこまで食い止めることができるのか。2024年後半は、輸入メーカーの新型EV、および軽EVのホンダN-VAN e:の販売動向に注目していきたいと思います。
高橋 優