選挙マネーは正しく使われているのか?総選挙を前に前回衆院選すべての候補の「公費の使い方」を徹底調査!「もらえるだけもらう」がこんなにも…
選挙に出馬した立候補者は、選挙ポスターやビラの印刷費などを公費で賄われる。前回2021年の衆院選では、その公費負担の上限いっぱいまで公金を使った候補者が83人もいたことが、日本大学法学部・安野修右専任講師の研究室と調査報道グループ・フロントラインプレスの調査で明らかになった。満額請求に違法性はないが、候補者の節約意識は乏しいと言わざるを得ず、「使えるものは使ってしまえ」という風潮が改めて浮き彫りになった。 【データ】選挙マネーでの「公費」をどのように使っているか、候補のデータを公開 ことし7月の東京都知事選ではポスター掲示場が実質的に「商業利用」されるなどの騒動が起きたが、公費負担そのものが「ムダ」を内包した制度だとの指摘もある。 (この記事の人名や肩書などは2021年衆院選の届け出内容に基づいています)
「上限いっぱい」を請求する候補が次々と
選挙ポスターなどの制作費を公費で負担する制度は、候補者の経済的負担を減らし、多くの人が立候補できる環境を整えようと、導入された。候補者は供託金没収点(衆院小選挙区の場合は相対得票率10%以上=法定得票率)をクリアする票を得た場合、①選挙ポスター ②選挙ビラ ③選挙ハガキ ④選挙事務所用の看板 ⑤選挙カー用の看板 ⑥個人演説会用の看板――という6種類の選挙資材について、制作費の全部または一部を関係法令の定める限度内で公費負担してもらうことができる。 今回、安野研究室は公営選挙制度の実態を全国レベルで明らかにするため、各都道府県の選挙管理委員会に情報公開請求し、2021年衆院選の「選挙運動費用収支報告書」を落選者も含めて全員分を入手した(未提出者3人を除く)。報告書は全部で854人分。の報告書を集計・分析した。 法定得票率を満たすなどして選挙運動費用の公費負担を認められた711人のデータを分析したところ、「使えるものはすべて使え」とばかりに候補者が上限いっぱいの金額を請求しているケースが続々と見つかった。ポスターやハガキ、選挙カー看板など6項目のすべてで満額請求した候補者は前出の通り83人を数えた。