再生可能エネルギーに暗雲 固定価格買取制度のどこが問題なのか 国際環境経済研究所所長・澤昭裕
接続保留問題があぶり出す固定価格買取制度の欠陥 北海道、東北、四国、九州、沖縄の各電力会社が再生可能エネルギー発電設備の接続申込みに対する回答を一時的に保留するなどし、混乱が広がっている。 今回の混乱を招いたのは誰の責任なのか。接続保留問題で非難や怒りの声を上げている人々は、個人や中小の事業主体がメインだ。「早い者勝ち」原則のこの全量固定価格買取制度の下で、早めに国から設備認定を受け、さらに系統接続するための電力会社からの「供給承諾」を既に受けている大手事業者には影響はない。大手事業者の中には、全量固定価格買取制度よりも前から再生可能エネルギーを導入しようとしていたプロの事業者もいるが、その事業者連は再生可能エネルギー導入についてはそもそも系統の容量がネックになることは十分認識しており、今回の事態に至ることも想像していただろう。だからこそ、容量が限界を迎える前にできるだけ早めに供給承諾を受けて接続を済ませているのである。 こうしたビジネスに参入するからには、悪徳ブローカーのような手合いから「濡れ手で粟」だと聞かされても、実際にはどういうリスクがあるのかを十分研究したうえで投資判断をすることが基本だ。系統連系の可否についてのリスクが制度上あることを電力会社が事前に説明していなかった場合には別だが、説明された上で投資判断したからには、投資家側にも責任はある。「この投資信託は元本割れのリスクがあります」と注意書きに書いてある金融商品を買って、うまくいかずに損したからといって元本を補償しろということは通らないだろう。 ただ、「早い者勝ち」ルールがおかしいというのであれば別だ。先に系統連系容量を押さえてしまった事業者に対して、自分たちを押し出しているのはあなたたちだから、少しその容量を分けてくれと訴えることにはそれなりの理由がある。なぜなら、「供給承諾」を得たにもかかわらず、太陽電池パネルの値下がり(事業者の利益分が増える)を待っていて実際に接続しないケースなど「電気事業」を営んでいるとは言えないような事例が存在するからだ。こうした事業者に対して承諾や認定を取り消すなどの措置を取ることは公平に叶うだろう。 それでは、政府に責任は全くないのか。政府も電力会社も驚くほどのスピードと規模で太陽光発電ばかりは申請されてくると予想していなかったことが、問題への対処で後手に回った原因となった。太陽光発電で一攫千金をもくろむ事業者のロビーイングに屈したのかどうかは分からないが、極めて好条件の買取価格を設定した結果、こうした事態を招いたという意味では国や価格算定委員会に大きな責任がある。今後は、太陽光発電とそれ以外の再生可能エネルギーとの量的なバランス変更や、太陽光発電の買取価格自体の早期引き下げ、改定間隔の短期化が必要となるだろう。