羊肉には箸を使うな! 池袋東口に見つけた“ガチ新疆ウイグル料理”店「疆莱」で喰らう野趣あふれる“本物”の味
現代ビジネス「北京のランダムウォーカー」でお馴染みの中国ウォッチャー・近藤大介が、このたび新著『進撃の「ガチ中華」』を上梓しました。その発売を記念して、2022年10月からマネー現代で連載され、本書に収録された「快食エッセイ」の数々を、再掲載してご紹介します。食文化から民族的考察まで書き連ねた、近藤的激ウマ中華料理店探訪記をお楽しみください。 第13回は、池袋東口「疆莱」(きょうらい)で味わった野性味あふれる新疆ウイグル料理――。 【写真】『進撃のガチ中華』出版記念インタビュー「中華料理の神髄とは何か?」
パレスチナ、そして新疆ウイグル自治区
今月7日、ついにイスラエルとパレスチナの紛争が炸裂した。以後は、日増しに荒廃していくガザ地区の様子を、周知のようにテレビニュースが虚しく映し出している。 私はガザ地区を訪れたことがない。だが、あの光景には「既視感」があった――そうだ、中国の西域に位置する新疆ウイグル自治区で見たものだ。 思えば、中東のイスラエルとパレスチナの関係は、中国の漢族とウイグル族の関係に、よく似ている。いわゆる「同床異夢的世界」だ。 同じ土地に暮らしていながら、道一本隔てると、言葉・服装・食事・宗教など、あらゆるものが異なっている。それらの地域では、日本にはない「緊張した日常」が展開されているのだ。 新疆ウイグル自治区の中心都市・ウルムチに降り立って、何より驚いたのは、漢族とウイグル族では、「時間」まで違っていることだった。漢族は「北京時間」で生活しているが、ウイグル族は「サマータイム」を取り入れ、北京時間より2時間遅れた時間で生活していた。すなわち、「漢族時間」で正午なら、「ウイグル族時間」は午前10時なのだ。 そこで私は、現地で知り合った漢族とウイグル族の双方に問うてみた。「もしも漢族の若者とウイグル族の若者が、ウルムチ駅でデートの約束をしたら、どうやって待ち合わせるの?」 すると、どちらの民族の人も呵々大笑して、同じ回答をした。「そのようなシチュエーション自体があり得ない」。両民族は、「互いに関わり合わない」ことによって、何とか均衡を保って共存してきたのである。 それで、連日テレビでガザ地区の様子を見ていたら、かつて訪れた新疆ウイグル自治区が懐かしくなって、無性にかの地の料理を食べたくなった。