乃木坂46ら坂道グループMVから見る“渋谷再開発”の記録 「熱狂の捌け口」「サイマジョ」……映像が語る都市の変化
乃木坂46「ここにはないもの」「Wilderness world」など渋谷を映し出すMVの数々
乃木坂46でも、スクランブル交差点で撮影された「Wilderness world」や2022年に閉店したBershka 渋谷店でのダンスシーンが印象的な「夏のFree&Easy」など、渋谷の街並みがたびたび登場してきた。中でも齋藤飛鳥のラストシングルとなった「ここにはないもの」のMVでは、リニューアルされた東京メトロ銀座線の渋谷駅のホームが象徴的に描かれている。これまで乃木坂46では1stアルバム『透明な色』のジャケット写真に東京メトロ千代田線・乃木坂駅のホーム及び改札口が使われたことはあったが、駅構内のホームでダンスシーンが撮影されるのは同曲が初めて。時代とともに変わりゆく渋谷とリンクするように、乃木坂46もこの10年間で変化してきた。そうした時代の変化を楽しめるのもMVの魅力だろう。 MVがその時代を映し出しているのと同じように、秋元康が手掛ける楽曲も、その時代の今を反映してきた。例えば、ドラマ『ポケベルが鳴らなくて』(日本テレビ系)の主題歌となった国武万里の「ポケベルが鳴らなくて」(1993年)では、当時流行していたポケベルが2人を繋ぐツールとして用いられ、櫻坂46の「BAN」(2021年)のタイトルは、ネット界隈でスラングとして用いられる“垢BAN”からきている。乃木坂46の「チートデイ」(2024年)では、ダイエット中に好きなだけ食べてもいいという日のことで、特に若い世代の間で使われる“チートデイ”をそのままタイトルにしている。どれも時代を代表する言葉ばかりだ。秋元康の楽曲には、そして坂道グループのMVには、その時代の流行を楽曲に落とし込む“秋元康イズム”が色濃く反映されていると言えるだろう。 渋谷の再開発は現在も刻一刻と進んでいる。坂道グループはこれからも渋谷の変化を鮮明に刻んでいくことだろう。10年後、その映像を見返した時に、きっとそれは当時の空気を濃密に捉えた貴重な映像となるのだ。
川崎龍也