トランプ再選に戦々恐々 関税引き上げ、エネルギー政策転換…業績への影響は来期以降か
上場企業の中間決算の発表が8日にピークを迎えたが、米大統領選で共和党のトランプ前大統領が勝利したことで、来期以降の業績へのリスクを警戒する声が強まっている。「米国第一主義」を掲げるトランプ氏は関税の引き上げや脱炭素化を目指してきたエネルギー政策の転換を打ち出している。特に自動車など製造業への影響は避けられず、各社が戦々恐々としている。 【ひと目でわかる】トランプ氏当選で懸念される日本の企業活動への影響 ■「すぐに生産移管できない」 「非常に大きな影響になる。ロビー活動を含めて対応していきたい」 トランプ氏の再選で、関税の引き上げを懸念するのはホンダの青山真二副社長だ。メキシコから米国に輸出する車は現在、条件付きで関税がゼロとなっているが、トランプ氏は100%の関税を課す方針を示す。 ホンダはメキシコの工場で年間20万台を生産し、うちの8割を米国に輸出する。青山氏は「すぐに(メキシコから米国へ)生産移管はできない。動向を見極めたい」と眉をひそめる。 電機大手ソニーグループの十時裕樹社長も「米国が世界経済や地政学に及ぼす影響は非常に大きく、当社の事業にも関連する」と語る。今後の対応について、十時氏は「(関税引き上げの影響を避けるため)どこの国で製造・出荷し、価格転嫁の考えをどう整理するかに尽きる」と説明した。 ■事業の不確実性高まる 米中の貿易摩擦がさらに激化する恐れもある。伊藤忠商事の石井敬太社長は、対中関税の引き上げを念頭に「中国製品が米国で遮断されると、アジアに戻り、市況を乱す。逆流の市況下落が気になる」と話す。 エネルギー政策では、トランプ氏はパリ協定離脱や化石燃料の増産を主張する。大阪ガスの藤原正隆社長は「北米で進める再生可能エネルギー分野(の事業)でブレーキがかかる可能性がある」と懸念する。 トランプ氏勝利を受けた「トランプ・トレード」で外国為替市場では円安ドル高が進んでいる。ただ、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「トランプ氏が大統領になってから、貿易、金融政策、米国の物価や個人消費、労働市場がどうなるか分からない。これらが複雑に絡まり、為替の動きは全く読めない」と分析する。 国内の上場企業は自動車などの輸出関連を中心に円安効果で好業績を維持してきたが、トランプ氏の再選で、来期以降はより事業の不確実性が高まりそうだ。(黄金崎元、佐藤克史)