マスク氏の投稿、「一線を越えている」-スターマー英首相が強く非難
(ブルームバーグ): ソーシャルメディアで英国政府を攻撃するイーロン・マスク氏の投稿を、スターマー英首相が非難した。過激さを増すマスク氏の物言いに首相がこれまでで最も強く反応した格好で、米英関係にも影を落とす恐れがある。
マスク氏は自身がオーナーとなっているX(旧ツイッター)で、フィリップス英女性・少女保護担当相は「レイプによるジェノサイド(民族大虐殺)の擁護者」であり、英国で起きた子供への性的虐待疑惑の対応の責任をとって刑務所で服役すべきだと主張。この投稿に対し、スターマー首相は「一線を越えている」と反発した。
マスク氏の投稿について質問されたスターマー首相は6日、「極右の毒で、フィリップス氏らに対する深刻な脅迫だ。自分にとっては、一線を越えている」と発言。「活発な議論は望むところで、それは必要だが、事実と真実に基づいたものでなければならない。うそであっては駄目だ」と続けた。
首相がマスク氏を直接名指しすることはなかったが、発言が同氏の投稿に向けられていたことは明らかだった。世界一の富豪でトランプ次期米政権の要職に就く見通しのマスク氏はスターマー政権を繰り返し攻撃し、右派の野党「リフォームUK」を支持。極右の反イスラム活動家トミー・ロビンソン受刑者(本名スティーブン・ヤクスリーレノン)の釈放を呼び掛けている。
スターマー首相は「うそや偽情報を広めている連中は、被害者には関心がない」とも述べた。
フィリップス氏は政界入りする前、家庭内虐待の被害者のための女性保護施設運営に携わっていた。同氏は約20年前に英国各地で報告されたグルーミング(わいせつ目的を隠して子どもに近づき手なずける行為)事件への全国的な調査を阻止したと、マスク氏は主張。この事件の加害者は主にパキスタン系の男性だったとされる。
英国に対するマスク氏の攻撃は、ここ数カ月に英政界の主要な関心事となった。8月に英国で暴動が発生すると、マスク氏は同国で「内戦が不可避」だとツイートして緊張をあおり、極右の暴徒が拘束された後には言論の自由が抑圧されたとして労働党政権を非難した。