新宿・作業員4人死亡事故から3年半 熱心な仕事人だった夫 「悪くないと信じてた」
「事故が誰の責任か、なぜ起きたのか、何もわからず辛かった。だけど、ずっと夫は悪くないと信じていました」 【写真】消火設備が誤作動したマンションの地下駐車場付近で対応に当たる消防関係者ら 東京都新宿区のマンション地下駐車場で二酸化炭素(CO2)を含む消火用ガスが放出され、作業員4人が死亡した事故から約3年半。この事故で犠牲になった一人、足立区の内装会社社長、上邨昌弘さん=当時(58)=を亡くした妻のチャリトさん(59)が産経新聞の取材に心境を語った。 上邨さんは約30年前に内装会社を設立。事故は天井の張り替え作業中に発生し、長年一緒に働いていた兄の昇巨さん=当時(59)=も亡くなった。 仕事には人一倍厳しく熱心。だが冗談好きで明るい人で、家族での夕食はいつも笑いが絶えなかった。長男とよくドライブに行き、実の父親ではないが長女も大切に育ててくれた。そんな平穏な日常が一変した。 事故が起きた3年半前の4月15日朝、チャリトさんは玄関で結婚以来の日課である頰へのキスをして、上邨さんを仕事に送り出した。翌日は2人の結婚記念日を祝う約束の日で、心待ちにしていた。 その日の夜、警察から電話があった。「旦那さんが事故に巻き込まれました」。翌日、再会した夫はひつぎで眠っていた。長男は身体を震わせ、泣きわめいた。チャリトさんはそんな倒れそうな長男を抱きかかえ、一緒に泣いた。葬儀では冷たくなった夫に何度もキスをして、別れを惜しんだ。 事故前、消火設備による事故が相次いでおり、上邨さんは「ちゃんと気を付けないと」と話していたという。 上邨さん兄弟の命を奪った事故。安全対策の責任があった株木建設側に対し、チャリトさんは「二度と同じことが起きないよう、しっかりと事故と向き合って、真実を話してほしい」。そう思いを語った。(王美慧)