鈴木涼美が問う、「その不倫は本当に愛のため?」 安易な自信が欲しいなら、「整形でも散財でも」別の方法で
作家・鈴木涼美さんの連載「涼美ネエサンの(特に役に立たない)オンナのお悩み道場」。本日お越しいただいた、悩めるオンナは……。 【写真】タトゥーがセクシーな小麦色の肌…39歳の鈴木さん Q. 【vol.15】不倫相手をどんどん好きになってしまうワタシ(30代女性/ハンドルネーム「りいさ」) 現在不倫中の30代独身女です。同じ職場の男性とひょんなことからホテルに行き、そのまま意のなすままに関係を持ちました。相手は元同級生の既婚男性。駄目なことだとは分かっていても、何度も関係を持ってしまいます。奥様にも不倫はバレており、一度は関係を清算したにもかかわらず、私から連絡してしまい、時間を見つけてはコソコソ会い、どんどん好きになっていきます。もうどうしたらいいか分かりません。 思い返せば学生時代はたいした恋愛はしておらず、いつも片想いのまま終わっていました。可愛いね、なんて、素敵な言葉をかけてもらったことはありません。大人になり、初めてできた彼は既婚男性(現在の方とは違う)で、不倫関係をつづけていましたが、私に好きな人ができ、破局。その後も恋愛はうまくいかず、やっと叶った恋はまたもや不倫。楽しい・うれしい半面、つらい・苦しい思いもあり、悩んでいます。私は、今後どうするべきなのでしょうか? A. 欲しいのは愛? それともインスタントな自己肯定感? 自分にどれくらいの価値があるのか、それはどんな価値なのか、知りたくて仕方ない。何か実感を伴う手掛かりが欲しい。そんなまだ若くて不安定な女が安易に頼ってしまいがちな“仮初めの価値を実感できる手段”というのがいくつかあり、不倫や売春はその典型例だと個人的には思います。 【こちらも話題】 セールスを断るたびに友人を失う女性の嘆きに、鈴木涼美が思う「不倫中の女友達を更生させようとした友人」への違和感 https://dot.asahi.com/articles/-/219650
若かった私が吸い込まれるように夜の歓楽街へ入り、知らぬ間に裸になってまでそこに居続けたのは、そういう場所には自分の価値を実感しやすい安易な仕掛けがたくさんあったからなのだとなんとなく思います。自分に値段がつけられてそれが実際に支払われることも、男が自分に興奮するところを目の当たりにできることも、若い私が自己肯定感を高めるには重要な仕掛けでした。簡単に手に入るそれらがどんなにチャチな価値であっても、まだ自分の形の定まらない女にとっては、輪郭を与えてくれるような気がしてしまうものなのです。 ■“ちやほや”の裏の罪悪感 既婚者との恋愛やセックスもまた、モテへのコンプレックスや自己評価の低さと格闘するまだ若い女にとっては自分の女としての価値みたいなものを実感する契機になりがちです。まず、未婚女性と遊びたい既婚男性は、結婚を最終的な目標に置いて恋愛する女性たちの眼中に入らないので、女性側としては競合相手が相対的に少なくなります。男性側も、既婚男性でもOKと言ってくれる都合の良い女が貴重だということは分かっているので、一度見つけたら手放さないようちやほやしてくれます。 男に小さな罪悪感や後ろめたさがあるため、財布の紐や女性のわがままに対する牽制も緩みがち。安定した家庭はすでに手に持っているため、それとは別の刺激や楽しさのみを目的とした恋愛やセックスは面倒ごとと無縁で煌めきやすいわけです。 一対一の関係を求めているわけではなく、あくまで人生のサイドディッシュなので、相手への要求もそんなに高くありません。普通の男が感じがちな自分の恋人の将来への責任感などを放棄している分、何かしら別のことでその罪の意識を帳消しにしようとする。そういう男の心理が、目の前の浮気相手に甘く、普通の恋愛よりハードルの低い「幸福」みたいなものを提供するわけです。