昨年のサプライズ復帰が話題を呼んだ坂口憲二が人間的魅力にあふれる天才外科医を演じた「医龍 Team Medical Dragon 3」
2023年4月放送の月9ドラマ「風間公親―教場0―」(フジテレビ)で、9年ぶりのドラマ出演を果たした坂口憲二。2018年3月に国の指定難病・特発性大腿骨頭壊死症の治療に専念するため、無期限の芸能活動休止を発表していた彼のサプライズ復帰が当時大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。 【写真を見る】鋭い眼光の坂口憲二 1999年にモデルとして芸能界デビューした坂口は、並行して俳優業にもチャレンジ。持ち前の端正なルックスと演技力から数々の人気作に出演し、俳優として確かな地位を築いていった。そんな彼の代表作といえるのが、主演として出演した医療ドラマ・医龍シリーズだ。 2006年の第1シーズンを皮切りに、2007年、2010年、2014年とこれまでに全4シリーズを放送。全シリーズの平均視聴率は12%超えを記録するなど、日本を代表する医療ドラマの1つに数えられている。 物語は、坂口演じる凄腕外科医・朝田龍太郎を中心に結成されるチームドラゴンが、困難を乗り越えながら数々の難手術に挑み、成功させていくというもの。第1シーズンでは治療不可能といわれた拡張型心筋症の術式として注目されたバチスタ手術、第2シーズンではまだ法改正前だった心臓移植をいち早く取り扱うなど、放送当時の日本が抱える最先端医療の問題に鋭く切り込んでいる点は本シリーズの大きな特徴といえる。 ■シーンに緊迫感を持たせる坂口の迫真の演技 そして、2010年に放送された「医龍 Team Medical Dragon 3」で取り上げたテーマが、「医療の国際化と外科医の存在価値」だ。 日本医療界が深刻な外科医不足に直面する中、世界ではカテーテル治療やロボット手術など新たな医療がめざましい進歩を遂げる時代。スーパー外科医不要論もささやかれる中、外科医の価値証明に挑むチームドラゴン。 緊迫感が伝わってくる手術シーンはもちろん見所といえるが、手術にあたっての人間ドラマを丁寧に描いている点も見逃せない。 例えば、「医龍 Team Medical Dragon 3」第2話で登場する根岸紗江(松下奈緒)は、重度の心房中隔欠損を抱えており、急ぎ手術をする必要性に迫られていた。しかし、末期ガンで余命いくばくもない父親に亡き母も着た胸元がざっくり開いたウエディングドレス姿を見せたい一心で、胸に傷跡が残る手術を躊躇していた。 それを聞いた朝田は、難易度が上がるのを承知で傷跡が目立たない低侵襲心臓手術を提案。当然、病院の立場から言えば、手術失敗による訴訟リスクの上昇につながる難度の低い胸骨正中切開を選択するべきだ。しかし、朝田の腕と根岸の意図を汲んだ胸部心臓外科教授の加藤晶(稲森いずみ)も低侵襲心臓手術を了承し、朝田と伊集院登(小池徹平)は手術に向けてリハーサルをくり返していく。 このように1人の患者に真摯に向き合うチームドラゴンの人間的魅力も、本シリーズを語る上で欠かすことはできないファクターだ。 朝田の魅力をいっそう引き立てる坂口の演技にも注目しながら、チームドラゴンの活躍を楽しんでほしい。 文=安藤康之
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