<ラグビーW杯>NZは、なぜ史上初の連覇を成し遂げたのか
中盤までは僅差の展開も、最後は下馬評にならうスコアとなったか。 9月31日、ロンドンはトゥイッケナムスタジアム。ラグビーワールドカップイングランド大会の決勝戦があった。オールブラックスことニュージーランド代表が、ワラビーズことオーストラリア代表を34-17で制した。4年に1度の祭典において、史上初となる2連覇を果たした。優勝は通算3回目だ。スティーヴ・ハンセンヘッドコーチは安堵の表情だった。 「タフだった。オーストラリア代表のゲームの取り組みは素晴らしかった」 キックオフ早々、互いに持ち味を発揮する。 オールブラックスは前半7分、相手の死角をぐりぐりと突く連続攻撃から先制する(3-0)。さらに9分には、自陣10メートルエリアで立て続けにジャッカル(接点で相手の持つ球を奪うプレー)を続ける。狩人はロックのブロディー・レタリック、センターのコンラッド・スミスだった。 もっともジャッカルなら、ワラビーズの黒子たちも得意だった。3-3の同点で迎えた18分、自陣ゴール前でのピンチでフランカーのマイケル・フーパーがそいつを決める。ランナーが球を手離せないノット・リリース・ザ・ボールの反則を呼んだ。続く22分には、やはりフランカーのスコット・ファーディーのジャッカルが相手のノット・リリース・ザ・ボールを招いた。 肉弾戦を軸に、一進一退の攻防は続く。そんななかオールブラックスが点を取れたのは、我慢ができたからだ。互いにプレッシャーを掛け合うなかでも、全選手がチームに必要な基本動作を遂行した。その刹那、ワラビーズがやや規律を乱した。 例えば26分だ。ワラビーズのフーパーらに好タックルを浴びながらも、オールブラックスは無理せずボールキープをする。じっくり球を保持するなかで左中間にスペースを見つけると、一気に展開。突破。慌てた相手のハイタックル(肩より上への危険なタックル)のペナルティーを引き出し、6-3とリードした。 さらに13点リードで迎えた後半2分だ。用意した陣形のもと中盤で攻めるなか、ハーフタイム明けから出場のセンター、ソニー・ビル=ウィリアムズが跳ねる。タックラーとぶつかりながら味方につなぐ、得意の「オフロードパス」を連発。この元気印の周りにワラビーズのタックラーが群がると、その脇の一本道へ好調のノヌが駆け込む。ウィリアムズから「オフロードパス」をもらい、インゴールまで走った。21―3。 ボクサー経験もあるウィリアムズとしては、疲れた相手を前にインパクトを与えるといういつもの働きをした格好か。トライを決めたノヌは言った。 「ソニーが本当にいいパスを放ってくれた。あとは守備の隙間を観て、ボールを掴んで走るだけだった」 南半球最高峰のスーパーラグビーに参加して両国勢と対戦したことのある日本代表の堀江翔太も、パナソニックの一員として国内のリーグを制した時に「(勝因は)我慢できたこと」と語ったことがある。我慢。カテゴリーを問わず、頂上決戦を制する条件かもしれなかった。