広島は「歴史的大失速」で4位に転落! 球団関係者が語る「新井監督の内心」 “ポジティブ発言”に垣間見える苦悩とは
内心では、かなり我慢しているはず
“大失速”のもうひとつの理由は、若手の底上げが乏しかったところだ。若手野手は、ショートの矢野雅哉を除いて、台頭してきた選手が見当たなかった。しかも、矢野は積極的に抜擢されたわけはない。新外国人のレイノルズ(※6月末に契約解除)が開幕直後に怪我で離脱し、ショートの小園海斗がサードに回り、空いたポジションに矢野が入った。 シーズン序盤は、若手の田村俊介や久保修、林晃汰をスタメンで起用したこともあったが、結果が出ないと、すぐに二軍へ降格させている。堂林翔太をはじめ、会沢翼や上本崇司、田中広輔、松山竜平といったベテラン陣が成績を落としていることから、若返りを進めてもよかったのではないだろうか。 広島の新井貴浩監督は、若手選手に結果が出なくても「責任は自分にある」という発言を繰り返していた一方で、若手の野手を抜擢しきれなかった。 「新井監督は、ドラフト6位で入団して、そこから厳しい練習を乗り越えて文字通り“叩き上げ”で主力選手になった。今の時代は、どうしても効率性や自主性が求められ、自分の若い頃と同じようにはできないことを理解している。それが(ポジティブな)発言や態度にも出ているように見えますね……。ただ内心では、かなり我慢しており、若手に物足りなさを感じているようです。また、新井監督は優しい性格ですから、実績のある選手の“意地”に期待している。監督自身も阪神を一度自由契約になって、そこから広島に復帰して4番まで打ってMVPをとった経験もありますからね。昨年は、それで上手くいって、前年5位から2位に浮上できたんですが、いよいよベテラン選手が衰えを隠し切れなくなってきた。今年に関しては、若手に切り替える判断が、ちょっと遅れたところもあったように思います」(広島の球団関係者)
思い切った世代交代に踏み切れるか
秋山翔吾や菊池涼介、野間峻祥は、ある程度の結果を残したとはいえ、30代前半から後半に差し掛かっている。来年以降、思ったような活躍ができないかもしれない。さらに、投手陣では、大瀬良と九里亜蓮は来年34歳となり、森下も将来的にメジャー挑戦の希望を球団側に伝えている。強力な投手陣が維持できるのか、不透明な状況だ。 「松田元オーナーは、球団の責任で優勝を逃したと話しており、新井監督の長期政権を検討しているようです。ただFA(フリー・エージェント)で補強するような球団ではありませんし、最近は外国人選手もなかなか当たりません。そうなると、自前で選手を引き上げるしかないですが、野手は矢野と末包(昇大)が出てきたくらいで就任前のレギュラーとあまり変わっていない。チームを作り変える必要があるため、オーナーも長期政権を示唆したのかもしれません。新井監督は情に流されずに、思い切った世代交代に踏み切れるか、重要だと思いますね」(前出の球団関係者) 来年は勝負の3年目。新井監督は、2018年以来のリーグ優勝を手にすることができるだろうか。
西尾典文(にしお・のりふみ) 野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。 デイリー新潮編集部
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