【公演レポート】“他人事ではない”舞台「モンスター」東京公演開幕に風間俊介「もう一度向き合う勇気をもらえる」
風間俊介が主演を務める舞台「モンスター」の東京・新国立劇場公演が、本日12月18日に開幕。それに先駆け、同日昼に取材会とフォトコールが行われた。 【画像】「モンスター」フォトコールより。(他16件) 「モンスター」は、イギリスの劇作家ダンカン・マクミランが2005年に執筆した戯曲。劇中では、家族から十分な愛情を受けられず、問題児として扱われる14歳の生徒ダリルと、かつての華やかな職場から逃れ、深い問題を抱える新人教師トムが対峙する様子から、登場人物が抱える苦悩や現代の教育・家族問題があぶり出される。本公演は、去る11月30日に開幕した大阪公演を皮切りに、茨城・福岡公演を経て、いよいよ東京公演がスタート。トム役で風間、ダリル役で松岡広大、トムの妻・ジョディ役で笠松はる、ダリルの祖母・リタ役で那須佐代子が出演する。 フォトコールでは、トムとジョディ、トムとダリル、トムとリタがそれぞれ登場する3場面が披露された。風間は、問題行動を起こすため、学校で普通のクラスに入れないダリルに冷静に対処するうち、自身の闇が頭をもたげるトムの姿を、抑揚を抑えたセリフ回しで体現。せきを切ったように感情が噴出する様を効果的に見せた。一方、松岡は、何がトリガーとなって暴れ出すかわからないダリルの“危なっかしさ”を、不安定かつ熱量ある演技で表し、緩急ある芝居で人の怖さと悲哀を浮き彫りにする。トムに寄り添い、気遣いながらも一歩引いた接し方が生々しいジョディ役の笠松、相手と話が通じないリタ役のつかみきれない本心を演技ににじませた那須。たった4人の出演者とは思えないような、厚みのあるパフォーマンスが立ち上がった。 取材会で風間は「これからの社会をどう捉えていくのかに深く切り込んだ作品。他人事ではない、客席の皆さんが自分たちと同じような空気感で物事を体感してくださっている」と手応えを述べ、演じるトムは出ずっぱりだが、「見どころは、僕が唯一出ていないシーンです(笑)。そこが物語の核であり、そのシーンのためにトムの存在があったのではないかと思います。ダリルのような異分子と出会ったときに、皆さんはどう思うか?ということを問いかけている作品なので、“主演”ではなく、皆様の“代表”のような気持ちで演じています」と語った。 一方、松岡が「個人的には手応えはないです。毎回極度の緊張感を持って演じていますし、実年齢とかけ離れた14歳役にトライアルアンドエラーで臨んでいる最中。謙虚に邁進していきたい」と言うと、役柄とは打って変わって“しっかり”した松岡のコメントに、風間が「(ダリルは)すごく刺激的な登場をするから、これから観る方はびっくりされるよ?(笑)」とツッコミを入れ、場を和ませた。松岡はさらに、「久々に純粋な会話で紡ぐ作品に挑戦しているので、会話の部分を重点的に観ていただけたらうれしいです」と述べる。 見どころについて問われた笠松は、「セリフやシーンが持つ意味が明確な作品ではない」と答えつつ、「いざ舞台に上がると、毎回作品がうごめいているんです。会場ごと、お客さんごとに違う『モンスター』ができていることを実感します。私は家庭内の、外面ではないトムとのシーンを演じるので、共に暮らし、一緒のものを食べて生きている人たちの空気感や、人が変化していく面白さを出せたらと思います」とコメントした。 那須は大阪・茨城・福岡公演を経て、観客の反応を「カーテンコールの雰囲気で推し量ると、インパクトは届けられたんじゃないかなと。新国立劇場では少し長い期間やるので、腰を据えて、ブラッシュアップしてお届けできたらと思っています」と話す。また、出演するどのシーンも大事だとしつつ、風間が述べた“物語の核となるシーン”について「決め込まないでライブ感で作れることが、役者として楽しいですし、作品が生きていると感じます」と微笑んだ。 また、演出・美術を担当する杉原邦生は「タイトル通り“手を焼く”作品です。戯曲を最初に読んで受け取った印象と、稽古でたどり着いたもの、お客さんと一緒に観ながら感じ取ったこと、すべてが変わる作品だと思います」と述べる。横長で奥行きがない舞台装置のデザイン意図については、「机を中心に、シーンが流れるようにスライドしながら、役の思いも錯綜していくというイメージで、作品を空間で視覚化した」と説明する。さらに、台本を読んだときに頭の中で音が鳴っていたことについて言及し、「音楽にも注目してほしいです」と続けた。 劇中ではすれ違いのコミュニケーションを繰り広げる4人だが、風間によると「裏では仲が良いんです。そういう雰囲気の作品ではないけれど、クリスマスの時期なので皆でチキンを食べられたらという話で盛り上がっている」のだとか。最後に「社会問題や事件にもう一度向き合ってみようという勇気をもらえるような作品です。今年1年、つらかったり、悲しかったりした思い出を少し浄化してくれるような、自分を支えてくれるような作品に出会いたいと思っている方に、ぜひ足を運んでいただきたいです」とアピールした。 上演時間が約2時間20分。東京公演は12月28日まで。なお、24・25日公演では来場者に公演オリジナルステッカーがプレゼントされる。 ■ モンスター 2024年11月30日(土)・2024年12月1日(日) ※公演終了 大阪府 松下IMPホール 2024年12月7日(土)・2024年12月8日(日) ※公演終了 茨城県 水戸芸術館 ACM劇場 2024年12月14日(土) ※公演終了 福岡県 福岡市立南市民センター 文化ホール 2024年12月18日(水)~28日(土) 東京都 新国立劇場 小劇場 □ スタッフ 作:ダンカン・マクミラン 翻訳:髙田曜子 演出・美術:杉原邦生 音楽:原口沙輔 □ 出演 風間俊介 / 松岡広大 / 笠松はる / 那須佐代子