北海道発のガチャ専門店「何ヶ月も通ってやっと5台」の時代から…年間売上115億に 2代目は元銀行員
さまざまなカプセルトイが人気を集め、活況のガチャガチャ業界ですが、ガチャガチャ評論家のおまつさんは「専門店の存在抜きには語れません」といいます。一時は「5台設置するのもやっとだった」というガチャガチャ専門店「#C-pla」を運営するトーシンは、幾度となく倒産の危機を乗り越え、現在は全国130店舗を展開するまでに成長しました。何がターニングポイントだったのか、おまつさんが取材しました。 【画像】全国130店舗展開の「#C-pla」 店内の様子は
活況のガチャ業界、「専門店抜きには語れない」
ガチャガチャ業界は、今年も活況を呈しています。2022年の市場規模は、過去最高の610億円を達成し、23年には800億円を突破しました。「なぜガチャガチャ業界がこんなにも盛り上がっているのか」を探るとき、ガチャガチャ専門店(以下、専門店)の存在抜きには語れません。専門店を運営する会社は、ベンダーと言います。ベンダーはメーカーから商品を仕入れ、ガチャガチャ自販機を設置します。 設置する場所は大きく2種類あります。ひとつ目が、設置店舗の空きスペースにガチャガチャ自販機を設置するロケーション型であり、スーパーマーケットやドラッグストア、量販店などに設置してあります。もう一つは、ベンダー各社が数百台のガチャガチャ自販機を設置して運営する店舗型です。 これがショッピングモールで見かける「専門店」になります。ガチャガチャ専門店と言えば、ガチャガチャ業界大手のバンダイグループが展開するガシャポンのデパートやガシャココのほか、ガチャガチャの森、ドリームカプセル、#C-pla(以下、シープラ)などがあります。 数あるのベンダーのうち、シープラを運営するトーシンは創業当時、北海道中心に展開するベンダーでしたが、2018年に初の専門店「#C-pla4丁目プラザ店」を出店して以来、5年間で130店舗(3月時点)まで急成長しています。そして今年、創業50周年を迎えます。
何カ月も通いつめ、やっと5台設置
トーシン代表の宮本達也さん(41)は、2013年にトーシンに入社して、2019年に代表になりました。このトーシンを立ち上げたのが、宮本さんの父、建治さんです。 宮本さんがどのような思いで会社を継ぎ、今の急成長を実現したのかを知るには、3つのターニングポイントがあります。 一つ目のターニングポイントは、宮本さんが建治さんの家業を継いだ時でした。 宮本さんは、トーシンに入社する前は銀行員でした。銀行に8年間勤める中、銀行員としての働き方に疑問を抱き始めていました。そんななか、宮本さんはトーシンの今後を考えます。宮本さんのお父さんは60代半ばとなり、「トーシンは自分が継がないと会社を精算するか、他者に売却して終わってしまう。これまでに何度も倒産しかけたことがありましたが、父はなんとか会社を40年守ってきました。その会社が無くなることに納得ができませんでした」と話します。 その思いから、2013年に宮本さんは銀行を辞め、お父さんと一緒にトーシンを経営することになりました。ただ、宮本さんが銀行を辞めたとき、母に「あなたにこんな苦労させたくない。大人しく勤め人をやってればいいじゃない」と泣かれましたし、大学時代の同級生に家業を継ぐことを報告したときには、「ガチャガチャなんかオワコンだろ、大丈夫? 潰れんじゃねーの」(宮本さん)と、馬鹿にされたそうです。それくらい、当時のガチャガチャ業界は認知度がほとんどなく隙間産業でした。当然、ベンダーにとってもショッピングモールやスーパーマーケットでも良い設置場所をもらえるような業種でもありませんでした。 「スーパーマーケットの店長の元に通い詰め、頭を下げて、設置してください、取引してくださいって、何ヶ月も通ってやっと新規設置が5台決まりました。それで月の売上がせいぜい5万円です」(宮本さん)。 これは、トーシンに限らず、ほとんどのベンダーも同じような状態で、ガチャガチャビジネスだけでは決して儲かるビジネスモデルではありませんでした。