進学、就職、異動に役立つ…最初の1週間の動きで人間関係が決定!「理想のムーブ」と「NGムーブ」
年度替わりが近づいてきた。この時期、さまざまな理由で新しい環境に身を置く人が増えるが、そこで重視されるのが人間関係だ。初めてのコミュニティにうまく馴染めれば、新たな生活は楽しく快適なものになる。一方で、溶け込むのに失敗すると、ストレスが増し、最悪そこから去る結果に……。厚労省の調べでも「前職を辞めた理由」として、「職場の人間関係が好ましくなかった」を転職入職者男性の8.3%が上位に挙げている。(厚生労働省「令和4年雇用動向調査結果の概況」より)。 【画像】い、いかつい! 新天地・中日に乗り込む中田翔の鮮やかなヘアスタイル より良い人間関係を築くための「理想のムーブ」と「NGムーブ」は何なのか。『人が集まる職場 人が逃げる職場』(クロスメディア・パブリッシング)の著者であり、(株)ライフバランスマネジメント研究所の代表である渡部卓さんに話を伺った。 ◆キーワードになるのは“嫌われない図々しさ” 「進学、就職、異動……新しい環境に入ったとき、最初の1週間の立ち振舞いがとても重要です。第一印象は人間関係を築くのに大きな影響を与えるのです。最初の1週間がその後の人生を左右することもあるかもしれません」 渡部さん自身も大企業、ベンチャー、外資系企業でキャリアを積んでいる。その豊富な現場経験を踏まえて、新天地で良好な人間関係を築くため、最初の1週間の「5つの理想ムーブ」と「3つのNGムーブ」を紹介してもらった。 「理想のムーブに関しては“嫌われない図々しさ”を発揮するのがポイントです。気負ってガツガツいく必要はありません。無理して“陽キャ”を演じなくてもいい。ただ、1週間まったくの受け身のスタンスだと、周囲に“話しかけにくい人”というイメージを持たれるリスクがあります。そうならないためにも『ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)』を積極的に実行してください。 とくに相談がオススメです。新入社員でも、中途採用の人でも『わからないことを質問したら仕事ができない人間に思われるのでは』と不安になり、相談を控える人がいます。それは悪手です。新しい環境には独自のルールがあるかもしれません。新参者がやり方を教えてもらうのは当然です。図々しいぐらいにあれこれ尋ねましょう。できないのに一人で抱えこんで暴発されるより、『わかりません』とハッキリ言ってくる人のほうが上司や先輩は安心できるのです」 次に渡部さんが挙げた「理想のムーブ」は、挨拶をすること。基本のキなので、あらためて言われるまでもない気がするが……。 「ただ、『おはようございます』と言うだけの挨拶ではありません。相手の名前を呼びかけることがポイントです。『◯◯さん、おはようございます』とか『△△さん、昨日はお世話になりました』のように挨拶に名前を足すことで、相手は親近感を感じてくれるはずです。同僚の顔と名前をいち早く覚えることもできて一石二鳥でしょう」 「人間関係を築くコミュニケーションで重要なのは雑談です。雑談はムダだとか生産性を下げると考える人もいますが、適度な雑談はむしろ職場の生産性を上げるという効果が、さまざまなデータで実証されています。ですから、コーヒーブレイクの時間に新参者のほうから雑談に加わることをオススメします。 その際、差し支えのない範囲で“自己開示”すると、会話がスムーズになるでしょう。ハラスメントに厳しいこのご時世、新しく来た人にどんな質問をしたらいいかわからないものです。だからこそ、自分から趣味や出身地、好きな旅行先や好きなスポーツなどを披露すれば、そこから話が広がっていきます。あらゆる個人情報を明かさない“とっつきにくい人間”とは違うと示すこともできるのです」 仕事上のコミュニケーションはこなせるが、雑談が苦手という人がいる。しかし、自分は人見知りだと認識している人でも、新しい環境で思い切って交流してみれば「意外に違和感なく接することができる自分を発見するかもしれない」と渡部さんは提案する。集合時間に早めに向かうことも有効なムーブだ。 「遅刻はもってのほか。とくに最初の1週間の遅刻は、かなり印象が悪くなります。会議やミーティングの際は、集合時間より早めに会場に行くことを心がけてみましょう。じつは、タイパ(タイムパフォーマンス)、コスパにうるさい若い人たちは、集合時間ギリギリに姿を見せるケースが多い。そんな中、早めに会場入りして、準備の作業中のスタッフに『なにか手伝いましょうか』と申し出てみる。これだけで評判を上げることは間違いありません」 たった5分前であっても、早めの現場入りは多くのリターンを得られるのだ。こちらのほうがはるかに“タイパ”がいい。では、いよいよ、5つ目の理想のムーブを紹介してもらおう。 「感謝の意思表示です。とにかく新しい環境に対するポジティブな感想をクチに出すのです。『こんないい会社に入れて私はラッキーです』とか『みなさん良い方ばかりで安心しました』などと感謝の気持ちを示す。お世辞ととる人がいたとしても、悪意にはとらないはずです。仕事ができることを示すよりも、最初は感謝を示すほうが組織に溶け込みやすい」 では、逆に最初の1週間でやってはいけないNGムーブについても紹介しよう。 「同僚、上司に対して“プライベートな質問”をするのはやめたほうがいいです。仕事における質問は遠慮なくするべきと勧めましたが、プライバシーに関して聞くのは“嫌われる図々しさ”になりかねません。最初の1週間で一気に距離感を詰めるのは得策ではない」 LINEなど個人的な連絡先を聞くのも時期尚早! プライベートまで含めた人間関係は時間をかけてじっくりと築こう。 「前の職場について話すこともNGと考えておいたほうが無難です。尋ねられたのならともかく、自分から『前の職場ではこういうやり方をしていました』と話すのは歓迎されません。今の職場に染まる姿勢を示す意味でも、前の職場の話題は封印しましょう」 最後に渡部さんは“どんな環境でも絶対に避けてほしいNGワード”を紹介してくれた。 「『できません』ですね。いや、正確には『できません』と言い切ってしまうこと、です。上司の指示や先輩からの頼みごとは無条件で『できます』と答えろという意味ではありません。その時点でのキャパや経験、スキルなどさまざまな理由でできない、と伝えなければならない場面はあるでしょう。その場合は『こうすればできます』というエクスキューズを付けて答えてください。 例えば、『今日中は難しいですが、明日のお昼までならできます』とか『経験がないのでできませんが、教えていただければできます』などと言う。単にできないことを伝えるだけでは、相手に拒絶された印象を強く与えるので気をつけましょう」 理想のムーブを駆使し、NGムーブを避ければ悪い印象を抱かれることはないだろう――新しい環境でコミュニティに無理なく溶け込み、快適な毎日を送ってもらいたい! 取材・文:佐野裕 さの・ゆたか フリーライター。ビジネス、人文などを主な守備範囲とし、雑誌・ネット等、メディアを問わず、記事の取材・執筆を中心に活躍。著書多数。
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